【第74回】
解熱剤は逆効果
風邪(2)
西洋薬による風邪の治療は対症療法、つまり症状を抑える治療が中心だ。セキが出ればセキ止め、熱が出れば解熱剤が使われる。ところが、北海道漢方医学センター付属北大前クリニックの本間行彦院長によると、「風邪に使われ漢方薬はほとんどが体を温める作用を持つ」という。熱が出るのに、なぜさらに体を温めるのか。
実は、ここにも漢方の知恵が働いていたのである。「風邪のウイルスは、熱に弱いのです。そこで、体は風邪をひくと体温を上げてウイルスを駆逐しようとします。漢方薬はその体のシステムをうまく利用して風邪を治すのです」。特にインフルエンザウイルスは熱に弱く、37度台になると時間単位で死滅していくそうだ。これが38度台になると分単位、39度台になると秒単位で死んでいくという。「高熱が出るということは、それぐらい強いウイルスに感染したということなのです」と本間院長。
では、解熱剤で熱を下げるとどうなるのか。風邪の仲間のウイルスをウサギに感染させて発熱させ、一方は放置、一方は解熱剤を与えて熱を下げる。すると、発熱したままのウサギはほとんどが回復したが、解熱剤を飲ませた方は、何と10匹中7匹が死亡。解剖すると肝臓の中にはウイルスが増殖してウヨウヨしていたそうだ。つまり、発熱によって一度は弱ったウイルスが、解熱剤の投与でまた元気になったと考えられるのだ。
そこで、本間院長は当時教授をしていた北大の学生80人に協力してもらって臨床試験を行った。風邪で熱が出た学生80人に一方は解熱剤、一方には解熱作用のない漢方薬をのんでもらった。その結果、何と解熱剤をのむと一時的に熱は下がるが、すぐに再発していつまでも熱が下がらないという結果だった。漢方薬をのんだ方が明らかに熱の下がりが早かったのである。
「熱のある期間は、漢方薬の方が平均して1日短かったのです。熱が長引くケースではその差がさらに大きくなった」そうだ。風邪の熱は、基本的に解熱剤で下げてはいけないのである。
【ジャーナリスト 祢津加奈子】
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