<熱血秋田塾・九州キャンプ編/鹿島>

 日刊スポーツ評論家の秋田豊氏(45)が、今年も「熱血秋田塾・九州キャンプ編」と題し、注目の選手に直撃する。第1回は、J2清水から鹿島に期限付き移籍したU-23日本代表のGK櫛引政敏(23)。

 大成する選手に必要なもの。技術、体力、戦術眼も大事だが、私は「こうなりたい」という強い思いを継続することだと思っている。本田選手しかり、川島選手しかり。リオ五輪出場権獲得に貢献した鹿島GK櫛引選手からも、同じような強い思いを感じた。

 1カ月のドーハ遠征から帰国した翌日、鹿島の宮崎合宿に合流した。5日の合宿終了が迫っていたため、クラブはオフを取るよう指示した。しかし、オフ返上を即断したという。最後方で声を張って守備陣を動かす立場である以上、新しい仲間とコミュニケーションを図るのは大事なことだ。寝食をともにする合宿は心を通じ合わせる機会として最適。わずか数日だが、今後につながる貴重な機会になったと思う。

 聞けば川崎FのMF大島選手、原川選手、DF奈良選手も早々にチームに合流したという。リオ五輪本大会のメンバーに生き残るには、クラブでの定位置確保は必須だ。今やらずして、いつやるのか。そうした「気概で動く選手」が、年々少なくなるように感じていた。だから、彼らのオフ返上が好ましく思えた。

 私もプロ入り直前の93年3月、鹿島のフィジカル強化合宿に自主的に参加した。まだ大学在学中で、クラブは来なくてよいと言っていたが、結果的に早くチームになじめた。それが定位置確保、さらには後の日本代表入りにもつながったと思っている。今しかできないことはある。時を惜しみ、チャンスに懸ける若手の今後に注目したい。(日刊スポーツ評論家)