開幕戦から見たくなかった。いや、どの試合にかかわらず、あって欲しくはない。しかしよりによって、シーズンのスタートを切る初戦から。なぜ分からなかったのか? ピッチにいる選手たちは分かっていたのに…。

 7日に15年シーズンが開幕した。担当する東京はアウェーG大阪戦。前半ロスタイム、G大阪FW宇佐美のドリブルは、明らかにゴールラインを割った。しかし試合は続行。一瞬、足の止まった東京守備陣の隙を突いて、宇佐美からバックパスを受けたMF遠藤のクロスを、FWパトリックがヘディングで決めた。雨中の白熱したゲームを期待していたが、文字通り、水を差された。

 ゴール直後の東京側の猛抗議は実らず、1点がG大阪に入った。ゴールした側からすれば、うれしい先制点。「ライン割っていたのでノーゴールでいいですから」なんて言うはずもないし、言う必要もない。だけど失った東京からすれば、やり切れない。副審は逆サイドにいて、ゴールポストとGKの陰で見えなかった、というのは言い訳にもならない。

 試合後、審判団に対して直接クラブの人間が抗議することはできない。当該試合のマッチコミッショナーが間に入ってやりとりをするだけだ。我々取材者も、原則審判団への取材はできないことになっている。この日も、東京側はマッチコミッショナーとの席を設けた。意見書も出すことを予定している。しかし、分かっているのは、結果は何も変わらないということだ。

 第1節9試合の主審の平均年齢は39歳。徐々に若返りの傾向にはある。またW杯ブラジル大会で使用され話題になった「消えるスプレー」の採用も検討。昨季ナビスコ杯決勝では部分導入された。同様に、ブラジル大会では、ラインを超えているかどうかを判定する「ゴールラインテクノロジー」が採用された。さらに欧州CLや欧州リーグでは、ゴール判定やペナルティーエリアでの動きを判定する追加副審2人がピッチに入る「審判5人制」を導入するなど、誤審防止のための議論は尽きない。

 J1は今季から2ステージ制に取り組む。シーズンの中で、盛り上がるヤマ場をつくるためだ。17試合でステージ優勝が決まる短期決戦。注目の開幕カードとして、「プラチナ世代」と言われる同じ22歳の東京FW武藤とG大阪FW宇佐美の対決は、話題を呼んだ。序盤から緊張感が漂うゲームだった。結果的に、疑惑のゴールを含め2点リードしたG大阪だったが、終盤に武藤の2得点で引き分ける痛み分け。試合後、誤審のシーンについてある選手の「審判が一番(真実を)分かっているんじゃないですか」という言葉が、なんだかむなしく聞こえた。

 新たな挑戦に出たJリーグ。スター候補たちも現れているのに、あってはならないところで水を差されていては、Jリーグは盛り上がらない。【栗田成芳】


 ◆栗田成芳(くりた・しげよし)1981年(昭56)12月24日生まれ。サッカーは熱田高-筑波大を経て、04年ドイツへ行き4部リーグでプレー。07年入社。J担当クラブは東京と甲府。昨夏のブラジル大会でW杯初取材。ダイエットのため、最近「長友式体幹トレ」を始める。