鳥栖の本拠地、ベアスタの芝がチームの勝利をアシストし続けている。今季ホームゲームは、18日のナビスコ杯松本戦までリーグ2試合を含む3戦全勝。特に14日の第2節は昨季3冠王者、G大阪に1ー0で完封勝利を収めた。GK林彰洋(27)は「パスワークのG大阪にとって、やりづらいピッチ状況なのは頭に入っていた。うまくそこを突ければと思っていた」としてやったり。就任1年目の森下仁志監督(42)が「すごい! ベストピッチ」と絶賛するホームアドバンテージを味方につけている。

 堅守カウンターからの一撃で大金星を挙げたG大阪戦。新芝効果は絶大だった。鳥栖FW豊田陽平(29)は「ボールを回されたが、自分たちが主導権は握っていたつもり。ミスさせたり、守備ブロックに進入させて奪えたので」と振り返る。

 攻守に勝るはずの3冠王者だったが、得意のパスの距離感が合わず何度もインターセプトされカウンターを浴びた。シュートは鳥栖の倍の16本を放った。だが深い芝に足を取られ、決定機を外しまくった。MF遠藤は「芝生が深い分、バウンド滑りがよくなかった。ボールのスピードが弱いときもあった」。長谷川監督も「芝が長くて、シュートの時とかにボールが浮いた部分もあった」と嘆き節だ。

 ベアスタの芝は96年以来、ピッチに堆積した砂除去などで19年ぶりに初めて全面張り替えられた。完成時は長さ22ミリに設定されていた。だが2月下旬に初めて練習を行ったチームの要望で20ミリに変更された。J1屈指の豊富な運動量を武器とする選手の足への負担を減らすための措置だったが、それでも、いきなり実戦の場となるアウェーチームを困らせるには十分だった。鳥栖が週1回行うベアスタの非公開練習で、戦術に合わせピッチ状態を確認できることも大きなメリットになっている。

 芝の特徴は葉1本1本が丈夫で太く、しげる密度が昨年の1・5倍あることだ。そのため、ボールへの抵抗となり転がりにくくなる。20ミリが長いのかと思いきや、ベアスタの芝を管理する藤田斉さん(39)によると「鹿島の3冠達成時(00年)は26ミリあったそうです」という。相当なスタミナが要求されたはずだ。藤田さんは「どこもホームアドバンテージを持ちたい。チームオーダーはどこにでもあると思いますよ」と、チーム戦略に応じた本拠地の優位性を説いた。

 昨季、鳥栖は一時首位に立ちながら、5位に沈み悲願のACL出場も逃した。それだけに、選手は新指揮官を迎え期すものがある。主力の流出は神戸に移籍したDF安田だけにとどまり戦力は充実している。今季、「芝」という頼もしい“新戦力”も加わった。新しい歴史を刻む土壌は整っている。【菊川光一】


 ◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市生まれ。福岡大大濠高-西南大卒。93年入社。写真部などを経て、現在報道部で主に一般スポーツを担当。プロカメラマンも兼務する“二刀流”記者。