U-22(22歳以下)日本代表が、リオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねるU-23アジア選手権(来年1月12日開幕、カタール)に向けて沖縄・石垣島合宿を行っている。前回ロンドン五輪までのホームアンドアウェー方式と違い、中立地で短期集中開催するセントラル方式に予選が変更。従来と異なるチーム作りを求められ、取り組んでいる。

 新たに直面している課題が「ピーキング」だ。大会に向けて、コンディションを最高の状態に持っていくこと。ホームアンドアウェーであれば試合のたびに調整でき、選手の入れ替えも可能だったが、今回は1カ月の長丁場、かつ一発勝負だ。早川直樹コンディショニングコーチ(52)は「W杯の場合、決勝トーナメントにピークを持っていく日本の監督はいない。まずは1次リーグの初戦に合わせるでしょう。しかし、今回の五輪予選は3位に入らなければリオに行けない。1次リーグで圧勝しても、勝負どころの準々決勝や準決勝で動けなくなっては困るので」と対応を迫られている。

 その一助とすべく、血液検査を導入した。石垣島合宿初日の23日。早川氏は午前練習をすべて測定に充てて「指標となる」データを集めた。国立スポーツ科学センター(JISS)のスタッフ4人を招き、600メートル×4、5本のインターバル走を実施。1分間の休息中に指先から採血し、乳酸濃度を測った。「A代表ではアギーレ監督時代に東京でお世話になりましたが、出張してもらうのは初めてでは」(早川氏)。より正確な数値を取るため、一般的には6~8人1組で行う計測を4人1組で行った。

 乳酸を測る単位はミリモルという。安静時が1ミリモルで、4ミリモルを超えると急激に乳酸がたまり始める。これが2ミリモル程度になる状態と心拍数を基準とし、最終予選への有酸素運動のベースにする。血中乳酸測定器「ラクテート・プロ2」を使い、疲労度の推定値に応じて個別メニューを組む科学的試みだ。

 発案した早川氏はこう説明する。「今年、試合に出続けた選手は少し休ませないといけないし、残念ながら出番が少なかった選手は上げていかないと。状態に応じて選手を3グループくらいに分けて、本番に向かわせたい」。大会が始まればメンバーの入れ替えができない中、余計な負傷の予防にもなる。最終予選メンバーは現在23人中21人まで発表。残り2枠を14人が争っている。石垣島合宿には天皇杯出場組を除く8人の候補選手が参加しており「まだ当確していない選手は必要以上に力を出してしまう。毎朝のチェックシートと脈拍のモニタリングで補完しつつ、最適な強度で鍛えられるよう導いてあげたい」と親心を見せていた。

 手倉森誠監督(48)も「最終予選の全6試合を勝って帰ってくるため、石垣島ではコンディションを整えることを第一に考えたい」と、大事な初日の午前練習だったが、すべて測定に費やすことを容認した。6大会連続の五輪切符獲得へ、最新のデータ活用術も駆使して突き進む。【木下淳】

 ◆木下淳(きのした・じゅん)1980年(昭55)9月7日、長野県飯田市生まれ。早大4年時にアメフットの甲子園ボウル出場。04年入社。文化社会部、東北総局、整理部を経て現在のスポーツ部。鹿島、U-22代表担当。趣味は血中アルコール濃度を保つこと。