日本サッカー協会の次期会長選が迫ってきた。1月31日に評議員75人の投票により、3月から2年間、日本のサッカーをけん引するトップが決まる。現段階で可能性があるのは2人。田嶋幸三副会長(58)と原博実専務理事(57)だ。最近は70代の会長が続いており、一気に若返ることになる。

 田嶋氏は実績でリードし、原氏は人間性で上回っていると言われる。田嶋氏が職員たちと一線を画しているのに対し、原氏は一昨年、技術委員長から専務理事に昇進した際、事務局に職員を集めて「オレのことを専務と呼ぶ必要はない。原さんでいいよ」と伝えている。親しみやすいキャラで、日本協会職員の中では人気が高い。

 31日の評議員会より一足先に28人の理事による理事会推薦者を決める投票の結果が7日に出た。それまでは職員やJリーグ関係者らの希望的観測も含め、原有利のうわさが、JFAハウスを駆け回った。気の早い一部マスコミには「理事会推薦は原氏」の見出しが躍ることもあった。

 理事会は会社で例えるなら取締役会で、評議員会は株主総会。21日の理事会で、2人の得票数が理事の前で正式発表されるが、日本サッカーの主なことを決めていく理事会の投票では、田嶋氏が圧勝したという。

 実際、公約はそれぞれ異なるが、目指す方向性はそれほど違わない。なんで、最高協議機関の理事会でこれだけの差が出たのか? 親近感のある原氏は、なんで票を伸ばせなかったのだろうか? 長年、日本代表や日本協会を担当した私なりの結論はこうだ。

 ここ数年の2人の実績の違いが、その票差を生んだのではないだろうか。田嶋氏の最大の目標はFIFA(国際サッカー連盟)理事になることで、昨年アジアで最高得票で当選を果たした。一方、原氏の目標は、技術委員長時代を含め、日本サッカーの育成と強化。両方ともあまり結果を残せなかったのは事実だ。A代表は、一昨年のW杯ブラジル大会で惨敗し、下部組織はさらに散々な結果で終わっている。U-17(17歳以下)、U-20W杯アジア予選で敗退し、世界にすらいけなかった。

 特に原氏は、W杯惨敗直後「1次リーグ敗退に対する日本協会の責任は?」の問いに「これから分析して決めます」と言ったが、半年後に出てきたテクニカルリポートから「責任」という言葉は消えていた。サッカーファンは忘れていたかもしれないが、サッカーにかかわる理事らは、そこをしっかりと覚えていたのかもしれない。

 まだ、最高決定機関である評議員会の無記名投票が残っている。47都道府県サッカー協会の代表やJ1の18クラブ代表、フットサル、なでしこ、大学、高校、審判などの代表で構成される彼らがどういう決断をするのか? 理事会の結果は反映されるのか? その投票結果で、日本代表の今後の活動が左右される。【盧載鎭】


◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。96年に入社し、主にサッカー担当。2児のパパ。最近フェンシング観戦にはまっている。