J1仙台の若手選手6人は昨年末、「海外武者修行」に出かけていた。欧州クラブや施設で練習する研修は今年で3年目を迎え、仙台のオフの風物詩になりつつある。今回渡欧した6人のうちの1人が、MF茂木駿佑(20)。15年に仙台ユースからトップチームに昇格。同年にJ1昇格後ではクラブ史上初の高卒新人で開幕スタメンを勝ち取ったシンデレラボーイだ。今季はリーグ戦8戦出場無得点に終わったが、研修で自信をつけて帰ってきた。

 茂木が「子どものころから海外でのプレーを夢見ていた」と言う海外研修は、昨年のアイスランド1部クラブでの研修に続き2回目だ。研修先は独リーグ3部のSCケルンの予定だったが、クラブの都合で6部チームでの研修を余儀なくされた。でもやはり仙台期待の若手。5日間の練習を通して、足元の技術を高く評価されたという。クラブの会長から「トップチームでやれる」と、実力は1部ケルンの選手相当と認められた。茂木は「うれしいです」とほほ笑んだ。サッカー大国の競技関係者に言われた一言は、大きな自信になった。

 より海外への思いは強まった。「ドイツに行って急にうまくなってはないけれど、ブンデスリーガのピッチに立ってみたい」。現地でチャンピオンズリーグの試合を観戦。入場曲に鳥肌が立ったという。クラブの日本人選手からドイツ語習得の苦労話を聞くと、帰国後に空港で早速ドイツ語の教科書を購入。勉強に励んでいるという。

 そこで、ドイツ語で印象的な言葉を教えて欲しいと尋ねた。笑顔で練習中に聞いた、ボールを呼び込む時に使うドイツ語「Ja!(日本語ではヘイ!)」という言葉を発してくれた。「ボールを呼び込まないと、こないので覚えた」と言う。その時の茂木は、サッカー少年のように純粋な目をしていた。大きな夢の実現のためには、まず研修で得た自信を糧に、来季仙台での活躍が求められる。【秋吉裕介】

 ◆秋吉裕介(あきよし・ゆうすけ)1993年(平5)6月28日、神奈川県横浜市生まれ。早大から16年4月入社。スポーツ部をへて、11月東北総局に異動し、仙台担当。15年冬に友人とケルンを観光。ケルン大聖堂にクリスマスマーケット、ビールと最高の街でした。