今年、静岡県東部地区に拠点を置く沼津が、J3に初参戦します。元日本代表のFW中山雅史(49)とMF伊東輝悦(42)が在籍して注目を集めていますが、私は1人の選手に期待しています。FW薗田卓馬(23)です。昨年、福岡大から加入してJFLでチーム最多12得点を挙げ、J3昇格に貢献。2年目の今年はエース候補としてさらなる飛躍が期待されています。

 実は薗田がプロサッカー選手を目指すきっかけとなったのが、中山でした。薗田の出身は鹿児島県。サッカー少年だった当時、J1磐田のエースだった中山がキャンプで鹿児島を訪れた際によく練習を見学していたといいます。

 「毎日練習を見ていました。まさか今自分が一緒にプレーできると思っていませんでした」

 中山のプレーにあこがれた少年が、十数年後に同じチームで在籍することになったのです。そして、中山とチームメートとして対面した際の思いを聞くと、「1人で興奮していました。あの中山さんが同じチームにいることがビックリで」と目を輝かせていました。

 薗田は、幼いころから抱いていたJリーガーになる夢をかなえましたが、現状は甘くありません。沼津に在籍する選手の多くはサッカーだけで生活ができず、働きながらプレーしています。薗田もその1人です。毎日午前8時30分過ぎから練習に参加し、午後は地元企業で働いています。障害のある方の就職を支援、サポートする会社で少年たちにサッカーを指導しています。日々の練習と仕事の両立は大変だといいますが、「仕事で学ぶことも多く、今しかできない経験なので。応援してくれる会社の人や子どもたちの分まで頑張らないといけないと思っています」と前向きです。

 今後の目標は「J1でプレーしてみたい」。そのためにも「まずチームの勝利のために全力でプレーし、結果を残し続けたいと思います。今年は本気でJ3得点王を目指します」と言葉に力を込めました。

 薗田自身が中山にあこがれ、Jリーガーとなったように、活躍を続ければ薗田にあこがれてプロ選手を目指す子どもたちが多く出てくるはずです。静岡県東部地区から全国区へ。私は、その成長を追っていこうと思っています。

 ◆神谷亮磨(かみや・りょうま)1985年(昭60)8月28日、静岡市清水区生まれ。幼稚園からサッカーを始め、小学校時代は清水FCのメンバーに選出。高校時代は、東海大静岡翔洋(旧東海大一)の攻撃的MFでプレー。日刊スポーツには08年に入社し、11、12年に磐田を担当。13、14年にアマチュアサッカー、15、16年は清水。17年は沼津を主に担当。