3年ぶりのJ1に復帰したセレッソ大阪。その中で韓国人指揮官の尹晶煥監督(44)の采配が見事にはまっている。

 第3節からトップ下でプレーするMF山村和也(27)は、第9節を終えて3得点。FW杉本とともにチーム最多得点で、自身のリーグ年間最多得点に並び、「(今までと)ポジションが違うんで、これからもしっかりと点取っていきたい」と意気込みを語った。

 本来はボランチやセンターバック(CB)。だが、尹晶煥監督に186センチの長身や技術の高さを買われ、ポジションを変更。キャンプ中からトップ下を試し、3月11日札幌戦からに先発に起用された。試合の状況に応じてFW杉本と2トップを形成したり、試合終盤にDFのポジションに入ることもある万能プレーヤーだ。山村は「(今のポジションに)だいぶ慣れてきた。(杉本)健勇とやりたいことが共有できているし、コミュニケーションも取れている」と手応えを口にする。

 監督による若手の起用も当たった。4月18日鳥栖戦で左太ももを負傷したDF山下に代わり、CBにプロ2年目のMF木本恭生(やすき、23)を投入。本職はボランチながら、この試合で決勝点をアシストするなど活躍した。リーグ戦で先発した3試合は全て勝利し、1得点1アシストを決め、付いたあだ名は「ラッキーボーイ」。4月16日G大阪戦で復帰した山下に正CBを明け渡したが、「ポジションはどこでもいい。試合に出たい」と先発奪還を狙っている。

 一見すると大胆な起用法だが、尹晶煥監督は選手をよく観察し、適正を考えて熟考する。「ずっと(選手を)見て、そこから決める。一発で決めることはないです。(今は)思ったより把握できていますね」。もちろん決断には怖さや不安もある。「良くなった場合、悪くなった場合、いろんなことを考えます。今は良い方向に行っている。今までは成功できました」。特に山村の活躍には「これくらいやってくれるとは思わなかった」と目尻を下げた。

 今季は1桁順位を目標にしているC大阪は、第9節を終えて5位につける。J1では7試合負けなしで、総失点は最少の7だ。まだリーグ戦の4分の1を終えた段階で、気が早いと思いつつも尋ねてみた。「目標を上位に修正することは考えていますか?」。その問いに指揮官はこう答えた。「まだ前半が終わっていないので、何とも言えないです。7月(2日)の東京戦が終わってから、もう1度考えてみます」。リーグ戦の前半が終わる7月にもう1度、尋ねてみよう。そのときの返答が、今から楽しみだ。【中島万季】

 ◆中島万季(なかしま・まき)1988(昭63)年8月11日、鹿児島県薩摩川内市生まれ。高校野球やアメリカンフットボール、高校ラグビーなどを経験し、4月からサッカー担当。