ザックジャパンがW杯を目指し、「死のC組」を乗り越える。2014年W杯ブラジル大会の大陸別組み合わせ抽選会が7月30日(日本時間同31日)、リオデジャネイロで行われ、国際サッカー連盟(FIFA)ランク16位の日本は9月2日から始まる同杯アジア3次予選でウズベキスタン(83位)、シリア(104位)、北朝鮮(115位)と同組のC組に入った。難敵がそろう上に、日本政府は現在、北朝鮮の拉致やミサイル問題への制裁として北朝鮮国籍保有者の入国を原則禁止。シリアの政情不安と合わせて、日本代表はピッチ外のストレスとも戦う必要がある。非常に危険なグループに入った。

 ザックジャパンがW杯に向けた苦難の船出に打って出る。アルベルト・ザッケローニ監督(58)は「我々が入ったのは難しいグループに思えるかもしれないが、W杯に行くためにはいずれやらなければならない相手。まずは初戦(の北朝鮮戦)に向けて、集中していく」とコメントしたが、想像以上にやっかいな相手が立ちふさがった。

 9月2日、ホーム初戦で対戦する北朝鮮がピッチ内外を含めて最大の「難敵」かもしれない。抽選会の第4ポッドは格下ばかりだったが、北朝鮮のみがW杯出場国。元川崎FのボーフムFW鄭大世を筆頭に豊富な運動量で泥臭く戦う強敵だ。

 ただ、一番の問題はピッチ外に横たわる。日本、北朝鮮政府間の関係は冷え込み、10年2月の東アジア選手権の際には北朝鮮の女子代表の入国について、拉致問題担当相を兼務していた中井洽国家公安委員長(当時)が「(北朝鮮に)制裁がかかっている段階だから(入国について)当然反対だ」と発言。ビザ発給と入国の見通しが立ちながら北朝鮮側が反発し、結果的に大会出場を辞退した。

 W杯南アフリカ大会のアジア3次予選と最終予選で同組となった韓国とは2度のホーム戦を戦う予定だったが、北朝鮮側が平壌でのホーム戦で韓国の国歌斉唱と国旗掲揚を拒否。規則で試合前の両国の国歌斉唱と国旗掲揚を定めているFIFAが仲裁に乗り出し、最終的には北朝鮮は上海で2度のホーム戦を開催した。同様の事態が生じればアウェー北朝鮮戦の開催地が変更される可能性がある。

 日本協会の小倉会長は「政治とスポーツは別。我々はFIFAのルール通り、ホームアンドアウェーで戦いたい。9月2日の初戦までにはアウェーも含めて(開催の可否を)決められれば」と明言。8月1日から外務省や文科省、法務省などと調整を開始する意向だが、常に日本は政治的な問題との戦いも強いられる。

 北朝鮮だけが問題ではない。シリアは現在、政情不安に見舞われ、6月のロンドン五輪アジア2次予選のホーム戦は中立地の隣国ヨルダンで開催された。小倉会長は「現在の政情を考えると(アウェーのシリア戦は)中立地になるかもしれない。FIFAの判断によるが、試合の1カ月前までには決まれば」と話したが、チャーター機使用も考慮される11月11日のシリア、同15日の北朝鮮とのアウェー2連戦の開催地が不透明な状況が続けば予選の準備段階にも影響が出てくる。

 ウズベキスタンは欧州スタイルのサッカーでアジア杯4強の難敵で、シリアも日本が苦手とする堅守速攻の中東スタイルを貫く。さらに緊張関係が続く実力国の北朝鮮。いずれも気を抜けない相手だ。「対戦相手も日本をアジア王者として研究して向かってくると思うが、1試合1試合に集中して戦う」とザッケローニ監督。ピッチ内外の「敵」との戦いを切り抜け、W杯へ前進していくしかない。

 ◆ウズベキスタン

 左利きの司令塔ジェパロフ(アルシャバブ)がゲームをつくり、得点力の高いFWゲインリフ(水原)らがゴールを奪う。中盤の軸MFカパーゼ(仁川)も鍵を握る。アジアの中では屈指の体格をいかし、組織的な戦術を駆使する欧州スタイルのプレーでアジア杯4位。W杯南アフリカ大会のアジア最終予選で日本に乗り込み、先制点を奪い1-1で引き分けている。

 ◆シリア

 FWジノ(アルカラマ)、FWマルキ(ロケレン)らを生かした鋭い速攻と、中東屈指のGKバルフース(アルカラマ)を中心とした堅守を誇る。今年1月のアジア杯1次リーグで日本と対戦し、先制点を許しながら一時は同点に追いつく粘りを見せた。FIFAランクは104位だが、侮れない実力を持ち合わせている。

 ◆北朝鮮

 エースFWホン・ヨンジョ(ロストフ)、日本でも知名度の高いFW鄭大世(ボーフム)が攻撃の中心。MF梁勇基(仙台)がW杯南アフリカ大会後に中盤で存在感を増している。運動量はアジア屈指。国内の若手育成にも成功している。ジーコジャパンが対戦した05年2月のW杯最終予選(埼玉ス)では1-2で敗れたものの、一時は同点に追いつくなど日本を苦しめた。