神戸FW大久保嘉人(29)が、1年8カ月ぶりに日本代表に戻ってきた。日本協会は17日、親善試合アイスランド戦(24日、長居)のメンバーを発表。10年W杯南アフリカ大会で世界16強入りに貢献した男が、ザックジャパンで初選出された。1月26日に誕生した三男橙利(とうり)ちゃんが、生後すぐに体調を崩し緊急入院。愛息に贈る代表復帰となった。

 不安な日々を過ごした後に、喜びが待っていた。大久保が日本中が熱狂に包まれた、あの10年W杯南アフリカ大会以来の復帰を果たした。忘れかけていた闘志は、短い言葉に込めた。

 「久しぶりの代表ですが、チャンスを逃さず、結果を出せるように気合を入れて頑張ります」

 病気に苦しんだ三男坊に贈る吉報だ。先月26日に4290グラムの大きな体で誕生した三男橙利ちゃんが、生後すぐRSウイルスに感染し緊急入院した。大久保は鹿児島キャンプ中で、点滴を続ける幼子の顔を見ることも、手を握ってやることもできなかった。すぐに病院に駆け付けたい気持ちを抑え、必死に練習に集中しようとする姿があった。想像を超える不安と、締め付けるような胸の痛み…。代表発表前日の16日にようやく退院した。この日、すやすやと眠る愛息の耳元に、そっと復帰を伝えた。

 14年W杯に向け世代交代を進めるザッケローニ監督が、6月で30歳になる選手を初選出するのは異例のこと。それだけ期待が大きいという証しでもある。正月明けには個人トレーナーと鹿児島県内でみっちりと自主トレ。体が絞れ、全盛期の動きを取り戻した。協会関係者が神戸の鹿児島合宿を視察しており、ザッケローニ監督は「スタッフからの情報は、キレのある動きをしていたというものだった」と招集経緯を語った。

 10年W杯後には燃え尽き症候群のようになり、代表への道を諦めかけた時もある。だが3人の息子のために、再び日の丸を付けて世界と戦う決意が湧いた。32歳で迎える2年後のW杯へ。大久保にブラジルへの扉が開いた。【益子浩一】