イラク代表のジーコ監督(59)が戦争で荒廃したイラクの監督を務める意義、情熱を語った。昨夏、国内情勢が不安定で危険を伴うイラクの代表監督に就任。W杯アジア3次予選突破にこぎ着け、最終予選では現在2戦2分けで、いよいよ日本との対戦(11日、埼玉)を迎える。7月下旬には給与未払い問題やイラク協会の協力不足から辞任騒動が勃発。だが、イラクサッカー復興への思いもあって続投を決意した指揮官が、イラクへの熱意を口にした。

 選手時代に栄光をつかみ、代表監督としても日本を06年W杯ドイツ大会に導いた。「神様」とまで称される男がイラク代表を指揮するなんて、誰が想像しただろうか。荒廃した国、さまざまなリスク…。その状況下でも就任を決意したジーコ氏が、胸の内を激白した。

 ジーコ監督

 就任を引き受けた1番目の理由は監督としてW杯に出場できる可能性があったからだ。以前からイラクはアジアでもレベルの高い選手がそろっていた強豪国のひとつだった。サッカー好きな国民、イラク代表が何を必要としているかを考え、そして湾岸地帯の戦争で苦労している住民たちに協力できるということも決意に影響した。

 もうひとつの鍵は、日本代表監督時代にテクニカルアドバイザーを務めるなど、二人三脚で歩んできた兄エドゥー氏の存在だった。同氏は現在イラク代表コーチを務めるが、監督としてイラクを86年W杯メキシコ大会に導いた功労者。イラクにとってW杯出場はこの1回のみだ。

 ジーコ監督

 私の兄エドゥーがイラク代表監督だった時に通訳だった人物から、今回オファーがあった。最初はエドゥーを監督にというオファーだったが、彼はもう監督をやりたくないという意思があり、私が監督、エドゥーがアシストという条件をイラク側が受け入れてくれたのです。

 昨夏の電撃就任後、3次予選を勝ち抜き、現在最終予選を戦っている。7月下旬には辞任騒動も巻き起こったが、イラク協会との交渉の末、続投を決意した。

 ジーコ監督

 イラクを率いるのは日本代表監督時代とは全く異なる仕事と言える。イラクが今、必要としているのは国内サッカー組織の再構成です。戦争によりイラクサッカー界は困難な状態に陥っている。設備のあるスタジアムもない。私が監督に招聘(しょうへい)されたのは、イラクサッカー再興のためだと思う。才能ある選手は多い。組織が整っていれば毎回W杯に出場できる条件は持ち合わせている。ただ、国で戦争や宗教対立が巻き起これば、サッカーに大きな影響を与えてしまう。

 事実、治安の不安による国際サッカー連盟(FIFA)の判断もあり、イラクは予選のホームゲームを中立地で行うことを余儀なくされている。

 ジーコ監督

 ホームで5万~6万人のサポーターの前でプレーできないのは残念でならない。日本はホームで常に6万人、オーストラリアや中国も4万~5万人の後押しがある。だが、我々は中立地カタールで試合をしても、わずか30人ほどのイラク人が応援してくれるだけだ。国内で試合すれば5万~6万人が後押ししてくれるだろう。これは本当に良くないことだ。【取材・エリーザ大塚通信員、構成・菅家大輔】