イラクを訪れる前と、訪れた後で印象は変わったのだろうか。
ジーコ監督
印象は変わっていません。戦争でボロボロになった国の再興というのは本当に難しいと思う。宗教問題も続く限り難しいとも思う。代表の中でも宗教問題でもめている選手たちがいる。うまく収めないと仕事に影響する。イラクに住むこともできない。(8月6日の時点で)イラクには3度行ったが、いずれも緊張ばかりして落ち着かなかった。常にガードマンが付き添い、1人歩きも禁じられている。これでは暮らすことはできない。
それでもイラク代表監督として働く使命感に燃えている。自らの知名度を使い、イラクサッカー界の窮状を訴え、再興へとつなげようと動き続けている。
ジーコ監督
このチャレンジは私の人生における使命だと感じている。サッカーを通じて他国との争いを避け、和を広げる。国の再興につなげる。国民のために役立っているという自信がある。私の名前をイラクサッカー復興に使ってもらう。私も欧州連盟のプラティニ会長と会談し、現状を伝えてホームで予選が戦えるように頼んだ。子供たちがサッカーができる場所も必要だ。イラクサッカー界のために私は本来の仕事以上のことをしている。
そんなイラク代表の最大の持ち味を何だと考えているのだろうか。
ジーコ監督
イラクの選手は苦労を強いられてきたので意志が強い。技術的に優れており、本当に大事な決定戦のような試合で底力が出せる。中立地で戦うことに慣れており、アウェーでの試合でも良い結果が出せる。彼らは困難が大きいほど克服する力を持つ。(長年エースの座に君臨する)ユニス・モハメドには決定力がある。チャンスがあれば得点を決められる能力がある。日本も油断したら彼にやられると思う。ナシャト・アクラムは頭が良く視野が広く、器用で技術的に優れた選手だ。ただ、彼は体力的な問題があり、自由にプレーさせている。以前はMFだったが、体力のことを考え相手のマークを与えず、FWの近くでプレーさせている。
ジーコ監督が就任してからイラク代表に変化はあったのだろうか。
ジーコ監督
私が一番気付いたことは、選手が勝利を求め自信を持って試合に挑むようになったことだ。我々の仕事を信頼し、それぞれの役割を理解して連係もスムーズになった。技術力はあるのに、これまでは大事な段階で敗れていた。今は選手に自信を与えるようにしている。勝つ力を持ち、目的に達することができると。ただ、自信を持ちすぎて私のアドバイスを無視するという心配はあるけど(笑い)。彼らはひとつの方法を教えたのに、自分の判断で別の方法を取り、失敗してから私の教えに従うんだ。それは日本になかったことだ。
多くの思いを胸に、いよいよ日本との重要な一戦に臨むことになる。
ジーコ監督
(埼玉スタジアムは日本代表監督時代に7勝2分けだが)まだ勝ち運がついているといいけどね(笑い)。あの頃はサポーターの熱気がプラスになった。今回は反対の立場だから応援はないだろうけど。私は常に勝利を求めている。それはどんな立場でも当たり前のことだ。ただ、今回は日本が有利だとは思う。引き分けでも悪い結果ではない。
勝負師の顔をのぞかせた「神様」の采配が運命の一戦の鍵を握るに違いない。【取材・エリーザ大塚通信員、構成・菅家大輔】

