<国際親善試合:日本2-4ウルグアイ>◇14日◇宮城スタジアム

 日本代表FW本田圭佑(27=CSKAモスクワ)が、惨敗の暗いムードを振り払うように声を上げた。日本(FIFAランク37位)は南米の強豪ウルグアイ(同12位)の強力攻撃陣に圧倒され守備が崩壊。本田が後半27分に左足で直接FK弾を決めて一矢報いたが、完敗。日本の大黒柱は「やられたからって次は引いて守ろうかというのはナンセンス。このやり方を貫く」と、来年6月のW杯ブラジル大会へ独自の考えを示した。

 ピッチ上より、もっと凜(りん)とした顔つきだった。惨敗後、本田は素通りすることが多い取材エリアで足を止めた。無言を貫くことで何かを伝えようとし、逆に、ごくたまに多くを語り真実に迫ろうともする。自分勝手だが、この判断には信念がある。話しておくべきだという結論に達し、まず守りのほころびについてゆっくり語り出した。

 「攻撃陣の俺らがそこをとやかく言うより今は3点、4点取れなかったことを反省している。麻也もコンちゃんも責任感が強い2人。みんながあまりネガティブなことを書かず、逆にこういう時だからこそポジティブに振り返るべき」

 敗戦の責任を背負い、同時に大量失点した今野、吉田の両センターバックを気遣った。全敗した6月のコンフェデレーションズ杯から大量失点が続く。厳しい声にさらされるのは当然だ。本田は批判を歓迎している。ただ、チームの方向性がぶれてはまずい。高く設定され裏を取られるシーンが多い最終ラインについて聞かれると、さらに声のトーンを上げた。

 「やられたからって次は引いて守ろうかというのはナンセンス。僕らはこれが正しいと思っている。このやり方を貫く。その信念を曲げずにやっていく」

 徹底して引いて守る。戦う上での1つの現実的手法である。ただ簡単に引いてしまえば、コンフェデ杯初戦ブラジル戦でネイマールに決められたようなミドル弾を食らう可能性もあると言った。あくまでこのやり方でやる-。公言する「W杯優勝」に突き進むという、所信表明だった。

 名門ACミラン移籍が間近に迫る中、後半には自ら「ポジティブ」なシーンを作ってみせた。ゴール右約24メートルの位置からFKをねじ込んだ。得意の無回転ではなく左足内側でこすり上げカーブをかけた。日本代表では10年W杯南アフリカ大会デンマーク戦以来の直接FK弾だ。

 これまでは繊細なボールタッチに影響が出ることを嫌い、足首を保護するきついテーピングをせずにプレーしてきた。だが、古傷の左足首痛による春先の長期離脱をへて復帰後は試合ごとにきついテープを用いるようになった。5月に「やっとテーピングをした時の感覚が分かってきた」と話していた。

 武器である「悪魔の左足」は完全復活した。決してポジティブばかりにはなれない試合だったが、ネガティブになっても何も生まれない。惨敗から進むべき道のヒントを本田が、ピッチ内外で示した。【八反誠】