U-23(23歳以下)日本代表の手倉森誠監督(48)が、我慢の采配を的中させた。準々決勝イラン戦で、延長戦を見据えて後半37分まで交代カードを切らなかった。一昨年のU-22アジア選手権、仁川アジア大会と、いずれも攻め急いだ采配で準々決勝で敗退。過去の苦い経験を肥やしに、3度目は最後までぶれることなく、3-0で勝利をもぎ取った。8強の壁を打破し、リオデジャネイロ切符に王手をかけた。

 手倉森監督が延長戦を見据えた我慢の采配で死闘を制し、鬼門の準々決勝を乗り越えた。0-0でも、指揮官は後半37分まで動かなかった。攻め急がない采配が奏功した。延長前半6分。後半43分から投入したMF豊川のヘッドで均衡を破った。同後半4分に背番号10の中島が勝利を引き寄せるミドル弾。直後にも中島がネットを揺らし、ダメ押し点。勝利を確信した指揮官はコーチ陣と抱き合い、ようやく笑顔がはじけた。

 手倉森監督 しびれました。延長戦を覚悟しながら戦っていた。持久戦になれば日本の方がコンディションがいいので分がいいと思っていた。

 我慢の采配ができたのは、過去に2度、準々決勝での苦い経験をしていたからだ。初陣となった14年の前回オマーン大会はイラクに0-1で敗戦。「相手の体力が落ちる延長戦に持ち込めば、必ず勝てる。ただ、絶対に90分間で勝負を決めてこい」と攻撃の選手を次々と投入し、残り6分で決勝点を奪われた。

 9月の仁川アジア大会も韓国に0-1で敗戦。後半43分にMF大島が決勝PKを献上した。寝付けず、深夜に日本の関係者に電話をかけ「俺のせいです」とこぼした。ファウルの直前に「厳しくいけ」と指示を出し、冷静な大島がファウルを取られた。「120分で勝つため残り5分を締めるつもりが正確に伝わらなかった」。だからこそ「3度目は勝ち急がない」と決めていた。

 指揮官は試合後、先制点を決めた豊川を先発起用の予定だったことを明かした。最終的に、追加点を決めた中島に先発を代えたが、指揮官に「うれしい悩み」を与えた2人がともに結果を出し、8強の壁を破った。手倉森監督は「出し入れをしても2人が活躍したのはいい流れ」と笑顔が止まらない。

 リオデジャネイロ五輪まであと1勝。指揮官は「次はますますしびれる試合になる」と再び気を引き締めた。