<アジアCL:鹿島4-0ナムディン(ベトナム)>◇1次リーグ◇F組◇21日◇ハノイ

 【ハノイ(21日)=広重竜太郎】鹿島が2度目のACL挑戦で、初の決勝トーナメント(T)進出を決めた。1次リーグ(L)最終戦のナムディン戦は、FW田代有三(25)が先制ゴールを決めるなど4-0で快勝。過密日程による疲労やチームメートの不祥事など、逆風をはね返した。2位北京国安が敗れ、1位の座を守った。既に突破を決めているG大阪は、1-1で全南(韓国)と引き分けて1次Lを終了。前年覇者の浦和を加えた日本勢3チームが、9月からの決勝Tに挑む。

 1次Lは通過点にすぎないことは、誰もが自覚していた。試合終了の瞬間は勝ったチームらしからぬ静けさ。その時点で2位北京国安の敗北の結果を選手は知らなかった。ロッカー室に引き揚げ、通路で決勝T進出の一報を聞き、やっと喜びをかみしめた。「まだまだ目標はここじゃない。優勝しか見えませんから」。FW田代はチームの思いを代弁した。

 午後5時のキックオフ時で気温32度という暑さに苦しんだ。ゴールをこじ開けたのは前半28分。MF小笠原の浮き球パスに反応して抜け出した田代が、左足で先制点をねじ込む。後半には3得点を追加し、J王者の誇りを見せつけた。他力ではなく自力で、苦しかった1次Lを抜け出した。

 出発直前の17日柏戦では、故障で連続先発が難しい内田、田代を温存した。小笠原が左太もも裏を負傷すると、オリベイラ監督は帯同予定のなかったアレックス理学療法士を出発日の早朝にたたき起こし、緊急で遠征に連れて行った。なりふり構わず、この一戦にかけていた。

 それでも現地に入ってから、思わぬことが起きた。酒気帯び運転の不祥事が発覚し、MF大道、船山の2人が緊急帰国となった。「選手はそれほど意識していなかった。ただ負ければ何を言われるか分からない状況だった」。DF岩政が言うように、危機感をひしひしと感じていた。

 国内リーグ戦とACLを並行して戦う中、選手は心身ともに疲弊した。最後方から同僚の動きを観察してきたGK曽ケ端は「動きを見れば、影響がゼロじゃないことは一目瞭然(りょうぜん)だった」と明かす。昨年の2冠王者が現在リーグ戦では7戦未勝利と壁にぶつかった。

 1つの試練を乗り越えた。だがノルマにすぎない。「連戦で結果が出なかったことを受け止めないと。個々のプロ意識を高めて、このためにすべての時間をささげるつもりじゃないと、ACLは勝ち抜けない」(岩政)。苦しんだ経験は9月からの戦いに生かされるはずだ。