サッカー日本代表の東京FW武藤嘉紀(22)が、ブンデスリーガ1部マインツから正式オファーを受けていることが、4月30日までに分かった。マインツ関係者が明かした。既にオファーが表面化しているプレミアリーグのチェルシーに続き、日本人選手が多く活躍するドイツから届いた。今後、日本国内で交渉を行う。さらに複数の欧州クラブからもラブコールが届く可能性が高い。

 「MUTO」の名は、欧州中に知れ渡っていた。マインツ関係者によると、プロ2年目ながらJ1で活躍し、代表に定着する武藤を高く評価。チェルシーに続く正式オファーを出したという。東京のクラブ幹部は「欧州で予想以上に評価を受けていた」と現地を視察した際に実感していた。

 マインツはFW岡崎が2シーズン在籍し、昨季は15得点、今季も12得点とゴールを量産する。日本人選手への信頼も厚く、プレーしやすい土壌ができている。また、主要空港があるフランクフルトから電車で30分もかからない。代表招集で帰国する際、スムーズな移動が可能で体力的な負担は少ないなどの利点がある。

 チェルシーから正式オファーを受ける裏で、他の欧州クラブもめまぐるしく動いた。移籍先の欧州主要リーグについて、武藤と東京側は話し合いの中でイタリアへ移籍する選択肢はなく、同幹部は「こちらがその意図を言うまでもなくイタリアに伝わっていたから(獲得の)動きはない」と言う。また、オーストリアのザルツブルクは昨冬から乗り出していたものの、来日して交渉する意思はなく正式オファーには至っていない。その中でドイツクラブが手を挙げた。

 海外移籍する際、障害の1つとなる移籍金についても問題はない。チェルシーの提示額は推定400万ユーロ(約5億2000万円)。国内から欧州へ渡った日本人選手の最高額(推定550万ユーロ)には届かないが高額な設定。一方のマインツについて、同幹部は「そんなにかけ離れているわけではない。一定のラインを超えているから障害になることはない」と理解を示す。

 限られた時間で大きな決断を下すことになった武藤。同幹部は「相当なストレスを抱えていると思う。できればじっくり考えさせたいけど、先方があってのことなので」と気遣う。今後さらに複数クラブが獲得に乗り出す可能性もあるが「まずはチェルシーに対してだけでも、行くのか違う道を選ぶのか答えないと。連戦が終わるくらいには答えを出さないといけない」。7連戦最後となる10日の鹿島戦を回答のメドとした。

 ◆マインツ 1905年、ドイツ・ラインラント-プファルツ州に創設。現ドルトムントのクロップ監督のもと、04年にブンデスリーガ1部に昇格。後に2部に降格したが、09年に再び1部へ昇格。10-11年は史上最高の5位となり、欧州リーグ出場権を獲得。今季は30節終了時で10位。本拠地コファス・アリーナは収容約3万4000人。マルティン・シュミット監督。