浦和の開幕からの連続無敗記録が19で止まった。広島とのホーム戦では、序盤から主導権を握り、前半35分にMF関根貴大(20)の得点で先制。しかしその後の決定機を生かせず、後半に2失点して逆転を許した。終盤はMF武藤雄樹(26)をボランチに下げるスクランブル布陣で、果敢にゴールを狙いにいったが、同点ならず。ホームでの連勝記録も9で止まった。

 その瞬間が来た。後半ロスタイム。DF槙野智章(28)の右足シュート、FWズラタンのヘディングシュートと、攻めに攻め続けた浦和の選手たちが、夜空に響く笛の音で我にかえった。電光掲示板を見上げれば、1-2のスコア。ついに、負けた。ぼう然と立ち尽くす横で、広島の選手たちが優勝したかのように、喜びを爆発させていた。

 両チームがピッチ中央に並び、ファンに向かって頭を下げた直後、FW高木俊幸(24)が両脇を選手に抱えられてピッチに出てきた。タオルで顔を覆い、おえつするように肩を揺らしながら、必死にスタンドのサポーターの方に歩いていった。

 前半26分。相手最終ライン後方に抜け出し、ファウルを誘ってPKを獲得。志願して蹴ったキックが、広島GK林にセーブされた。「自分を出し切ろうとした結果、ああなってしまった。そこが悔しい。自分にとって、これ以上残酷な状態はないのかなと。どう立ち直れるか、正直分からない」。たった1敗とはいえ、リーグ戦20試合目にして、今季初の黒星。これ以上ない重さを持って、高木の心をさいなんだ。

 試合自体は、終始浦和のペースで進んだ。DF槙野が「この数試合、うまくいっていなかったのに比べて、非常に内容はよかった」と話す通り、前節の山形戦でまったく形にならなかった攻撃が、この日は好調だった。縦パスからゴールに向かって加速する得意の形が、何度もつくれた。広島の12本に対し、シュート23本を放った。

 それが分かったからだろう。試合後、スタンドを埋める赤いサポーターからは、罵声ではなく温かい拍手が送られた。GK西川は高木を「泣くな。よくやったよ。大丈夫だ」と笑顔で励ました。MF柏木は「またここから、シーズン最後まで負けないようにする。それだけ」と言い切った。無敗記録という見えない重荷を肩から下ろし、もう1度悲願の年間優勝へ向けて仕切り直す。【塩畑大輔】