ソニー仙台が八戸を下し、初優勝を飾った。後半24分にFW村田純平(33)のゴールで先制。第1戦で敗れているため、これでタイに持ち込んだ。90分間では決着がつかず、延長戦に入り計120分間を戦ったが、その後両チーム得点できず、PK戦へ突入した。4-4でサドンデスに入り、6人目の後攻でMF秋元佑太(23)が決めて激闘に終止符を打ち、東北に初の優勝旗をもたらした。

 「家に帰って泣きます」。ソニー仙台8年目のベテラン村田は照れくさそうに言った。後半にこぼれ球を押し込んで試合を振り出しに戻した男は、チームで数少ない宮城県出身者。東北高OBで元日本代表MF今野を後輩に持ち「地元にうれしいニュースを与えることができてうれしい」としみじみ喜びに浸った。

 サドンデスのPKまでもつれた激烈な優勝争いだった。決戦となったこの日はホーム戦。2点差以上でしか逆転できない背水の陣だった。初戦の反省から、相手5バックの裏を突く攻撃を徹底して練習した。そのスタイルは立ち上がりからはまってはいたが、前半はノーゴール。後半なんとか村田の一撃で追いついてみせたが、30分間の延長戦でも、5対5のPK戦でも決着のつかない、死闘だった。

 そんな苦しい状況から初タイトルを手に出来た要因は「逆境をはね返す力」と石川監督。今季のリーグ戦では、先制されても巻き返し白星を重ねた。11年の大震災を受け「復興のシンボルとして元気を与えろ」という会社からの使命もあった。これまで積み重ねてきた努力が、大一番で選手らを奮い立たせた。震災当時、多賀城本社に津波が押し寄せるのを目の当たりにした村田は「あの日から優勝するためにやってきた。あのとき、みんなで決意を固めたのが良かった。今日は本当にうれしい」と目に涙をためた。

 東北勢初の快挙を成し遂げ、来年は連覇という大きな目標が出来た。キャプテン瀬戸は「東北には多くのチームがある。元気にやっていることを示し、僕らが引っ張っていきたい」。苦しい試合を覆しての優勝。「復興のシンボル」に、ふさわしいチームの戦いだった。【成田光季】