浦和がMF武藤雄樹(27)の決勝点で、広州恒大(中国)に1-0で勝った。高額な外国人選手に攻撃を託し、クラブの出資でサポーターも大挙会場に送り込む“カネの力”で勝ちに来る相手を、連動サッカーで制した。これで勝ち点7の2位に浮上。次節20日のシドニーFC戦の結果次第で、1次リーグ突破が決まる状況をつくった。

 100億円トライアングルの個の力を、練りに練ってきた連動サッカーが上回った。後半7分。浦和は敵陣で奪われたボールをすぐに奪い返すと、素早く右サイドに展開した。MF関根の右クロスに、MF宇賀神がボレーで合わせる。これをゴール至近距離のMF武藤がコースを変え、ネットに突き刺した。

 少ないタッチ数で素早くボールを動かし、あっという間にゴールに迫る。浦和の真骨頂とも言えるゴールで、アジア王者を破った。ペトロビッチ監督は「今日、選手たちが見せてくれたプレーは、サッカーで大事なものはお金では買えないということを証明するものだった」と破顔した。

 1点を追う広州恒大は、FWジャクソン・マルティネスら高額外国人選手を押し立て、攻勢に出てきた。これまでの浦和なら、中盤の選手まで最終ラインに吸収され、相手の波状攻撃を許す展開だ。

 しかしこの日は、MF阿部、柏木らが前に出ながらの守備で、相手に波状攻撃を許さなかった。攻撃参加した宇賀神、DF槙野らの後方に、武藤が前線からカバーに回ったりと、リスク管理も徹底していた。

 最後方からこれを見守ったGK西川は「みんな余裕があって、周りがよく見えている。それで広州恒大をゼロに抑えた。これは見えない収穫だと思います」と笑顔をみせた。

 広州恒大は昨年のクラブW杯でも、急に胸スポンサーを変更するなどの問題を起こしたが、とにかく罰金を払って解決してきた。この日も、会場入りの時刻に間に合わず、両軍メンバー発表を遅らせた。

 クラブが出資し、数千人規模のサポーターのチケット、ユニホームを手配して埼玉スタジアムに送り込む“ホーム化作戦”も準備していたが、浦和のサポーターが多く来場して食い止めた。お金だけじゃ、すべては解決しない。浦和が内容と結果で証明してみせた。【塩畑大輔】

 ◆ACL 32チームが出場し、1次リーグは全8組で総当たり(ホームアンドアウェー)で実施。各組上位2チームが16強による決勝トーナメント(T)に進む。決勝Tもホームアンドアウェー。優勝すればクラブW杯の出場権を得る。昨年の優勝は広州恒大。