浦和のFW李忠成(30)GK西川周作(29)DF槙野智章(28)GK大谷幸輝(27)が25日、熊本市を訪れた。大分出身の西川の発案で、被災地で支援活動を続けているJ2熊本FW巻を頼って現地入り。まずは熊本市内の施設で、熊本の選手たちと合同で、被災者とのサッカー交流会を行った。

 クラブが配慮し、事前の報道や告知を一切しなかったため、現地では驚きの声が上がった。ツイッターでは「李、西川、槙野がいた!」「めっちゃかっこいい!」「弟が一緒にサッカーしてる。うらやましすぎ!」などのリアクションも沸き上がった。

 幼稚園から高校まで、男女合わせて200人ほどを集めて行ったサッカーでは、槙野がオーバーヘッド弾を披露するなど大ハッスル。会場は大いに盛り上がった。槙野は「サッカーがみんなを笑顔にする力を再確認させていただいて、かえって僕らの方が元気、自信をいただいた気がします」と話した。

 その後、巻の紹介で熊本市内の避難所になっている中学校を訪問。紙おむつやマスクなどの物資や、サイン入りのTシャツやリストバンドなどの記念品を届けた。立ち会った巻は「被災者のみなさんも笑顔になってくださった。来てくれて本当にありがたいです」と感謝した。

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 浦和は今季開幕から国内でのリーグ戦と、アジア各地を転戦するアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の掛け持ちで、週2試合ペースの連戦が続いていた。先週も20日に往復1万6000キロの大遠征で、アウェーでシドニーFC戦を戦った後、24日にJ1首位の川崎Fと大事な上位対決を戦っていた。

 シドニーFCとはきっちり引き分け、ACL1次リーグ突破を決めた。川崎Fには今季初の黒星をつけ、代わりにリーグ首位に立った。ハードで大事な連戦がようやく終わり、選手たちはひと息つきたいタイミング。しかも連戦が終わったとはいえ、次の名古屋戦は29日の金曜日に迫っている。

 しかし槙野は川崎F戦終了後、取材エリアの片隅でひそかに「行くなら今ですから」と思いを吐露していた。普段から「1日が24時間では足りない男」と呼ばれるように、行動力は並外れている。被災地への思いに駆られるように、貴重なオフを返上しての熊本入りを決断した。

 FW李は川崎F戦でも、チーム2位の走行距離11・339キロ、同2位のスプリント走23回を記録。攻守の素早い「切り替え」から、敵陣でボールを強奪して波状攻撃をかける「ミシャ・プレス」を体現する存在として、猛然とピッチを駆け回っていた。

 「今日は大一番で、コンディションがどうこうという試合ではないと思っていた」。強い思いが、鬼気迫るプレーをさせていた。しかし試合が終わるとすぐに、頭の中は素早く「切り替え」られた。「被災地のみなさんのために、自分たちに何ができるだろうか」。西川も、槙野も、大谷も同様だった。

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 避難所訪問を終え、帰京便に乗る福岡空港に戻ったころには、各選手ともリーグ戦に向けて気持ちを「切り替え」ていた。槙野は「次はJリーグの試合を見ていただいて、被災者の方に喜んでいただかないと。何としてもいい内容で勝つ」と言う。

 攻守の素早い切り替えで敵陣に相手を押し込み、華麗なコンビネーションでゴールを決めて勝つ-。名古屋戦に向けて、それぞれが強く意気込んだ。