リオデジャネイロ五輪代表の浦和FW興梠慎三(29)が、後半ロスタイムの決勝弾で、9年ぶりのリーグ戦5連勝をもたらした。過去1分け4敗だった鬼門ユアスタで終盤まで苦戦を強いられたが、試合終了直前のワンチャンスを生かした。オーバーエージ(OA)枠での五輪出場を前に、貴重な置き土産を残した。

 後半ロスタイム。興梠は中盤で柏木がボールを持った瞬間、ゴールへ向かう「青写真」をはっきりと脳裏に描いた。足元で縦パスを受けるふりをしてから、一気にDFライン裏に抜け出す。「歓声を聞いて、オフサイドの旗は上がらなかったと確信した。GKが来る気配があったので、うまく浮かせれば決まると」。

 トップスピードの中で巧みなチップキック。視野の広さ、質の高い動きだし、正確な技術の粋が詰まったシュートを見事にゴールに流し込んだ。「前半には、パスを出すタイミングで(柏木)陽介と言い合いにもなりました。でも最後は完璧なタイミングで出してくれた」。前節柏戦でも、同様の形があったが、微妙な判定でオフサイドになった。ただ、完璧なイメージは共有できていた。「2度目の正直」を、抱き合って喜んだ。

 苦しむチームを、ワンチャンスで救った。仙台は前線からのプレスで、浦和の持ち味である自陣からの組み立てを寸断しにきた。加えて、浦和加入後アウェー仙台戦3試合6得点の興梠も、徹底マークを受けた。「仙台キラーって記事が出たから、厳しく来られたのかな(笑い)」。チームは主導権を握り切れず、一進一退の攻防を繰り返しながら、試合終盤へ。やはりユアスタは鬼門か-。そう思わせる展開が続いた。

 それだけに、終了間際の得点は値千金だった。「必死の守りを勝ちにつなげられてよかった。思うようなサッカーはできなかったけど、連勝で五輪にいければ、それに越したことはないでしょう」とうなずいた。

 試合後、興梠をOA枠で招集した五輪代表の手倉森監督は、ペトロビッチ監督のもとを訪れていた。ハグをして、興梠の招集を「いい人選だ」と歓迎してくれたという。「これでいい形で彼を連れていくことができる」と手倉森監督。興梠がリオ五輪を前に、チームに貴重な置き土産を残した。【塩畑大輔】

 ▼J1連続シーズン2ケタ得点 浦和FW興梠が今季10得点目。鹿島時代の12年から5年連続で年間2ケタゴールを達成。5年以上連続は史上6人目。最長記録は7年連続で、FWエジミウソンとFW佐藤が達成。FWジュニーニョが6年連続。5年連続はFW呂比須、FWマルキーニョスが記録している。

 ▼浦和の連勝記録 J1リーグ戦で5連勝は07年の25~29節以来9年ぶり。次節も勝って6連勝とすれば、年間優勝した06年の22~27節に6連勝して以来となる。7連勝は95~96年に記録し、クラブ最長の8連勝は98年に達成している。