今季限りでの現役引退を発表した磐田のMF岡田隆(32)が10日、静岡県磐田市内で引退会見を行った。

 穏やかな表情で、スーツ姿で登壇した。クラブ側から引退会見を開催する意向を聞いた際に「スター選手がするもの。僕はいいです」と断ったという。それでも会見に臨んだ胸中について「幸せな選手生活でした。幸せや充実度は、スーパースター級だと思います」と笑顔で話した。

 静岡・藤枝東高から筑波大に進み、2007年に磐田に入団。12、13年シーズンはJ2福岡への期限付き移籍を経験。15、16年シーズンはチーム主将を務め、10年目でプロ生活に幕を下ろすことになった。「幸運なのは、ジュビロに入団できたこと。すばらしい技術や身体能力がないのに10年間、プロとしてできたのはジュビロだったからだと思います」と話した。

 会見の途中、「父の話をさせていただきたい」と切り出した。2009年6月29日に、父幸三さん(享年62)が肝臓がんで他界。幸三さんは野球経験者だったが、「小中高大と、ほぼすべての試合を見てくれた。信頼して応援してくれていた父の存在は、大きかった」と振り返った。その後、岡田はレギュラーを獲得し同年8月1日のホーム千葉戦(3-2)でプロ初ゴールを挙げた思い出深いシーズンだ。プロ生活の中で、得点はこの1点のみだった。「初ゴールは利き足ではない右足で、父が乗り移ってゴールを決めてくれたのかなと思う。この試合が、その後もプロ選手の生活につながった。ありがとうと伝えたい」と感謝の言葉を口にした。

 今年12月からは、強化部のスカウトに就任する。「僕にできることはわずかですが、輝かしい歴史のあるジュビロを強くしたい」と意気込みを語った。

 会見後には木村稔社長(62)から大きな花束を渡された。チームの主将として、精神的支柱として常に明るく、前向きに取り組んできた岡田らしく、最後も優しい笑顔だった。