レギュラーシーズン6位の岡山が悲願のJ1昇格に王手をかけた。敵地で3位の松本を2-1で破り、決勝に進出した。前半23分にFW押谷祐樹(27)が先制点を挙げ、同点の後半ロスタイムにFW赤嶺真吾(32)が勝ち越し弾を決めた。昇格の最後の1枠をかけ、12月4日の決勝(金鳥ス)で3年ぶりのJ1復帰を目指すC大阪と激突する。

 険しい鬼退治の道を1つ進んだ。桃太郎で有名な岡山が、引き分けなら規定で敗退する準決勝を乗り越え、決勝へ進んだ。イレブンは抱き合って喜んだが、まだ鬼ケ島への道半ば。キジ、サル、イヌを連れて戦った桃太郎ばりに選手を束ねる長沢監督は「諦めない姿は見せたが、まだ何も成し遂げていない」と初のJ1昇格へ気を引き締めた。

 松本に乗り込んだ約1200人のサポーターが恒例の「桃太郎チャント」を歌って出迎えると、鬼退治一行は前半23分に先制した。自陣からの浮き球を赤嶺が頭でそらし、抜け出した押谷は、キジがくちばしで鬼を刺すような鋭いシュートでゴールを射抜いた。

 1-1の後半ロスタイムは、赤嶺がとどめを刺した。守勢に回って少ない好機の中、ロングパスを受けるとGKの目前でワンタッチでコースを変えるシュート。得点への鋭い嗅覚がイヌに重なる? 赤嶺は「このワンゴールを決めるためにやってきた。決められてうれしい」と喜んだ。

 J2参入8季目で初出場したPOでつかんだ昇格王手。鹿島で数々のタイトルを手にしてきた元日本代表DF岩政は「昇格をやり遂げたらサッカー人生でやることはない。岡山をJ1に上げ、潔くこの世界を去る」と、サッカー界を「サル覚悟」を示した。押谷は「セレッソが鬼かは分からないけど、僕らも桃太郎みたいに力強いストーリーを描けたら」。岡山にとっての鬼ケ島となる決勝で、次なる鬼、C大阪を倒して宝物を持ち帰る。【成田光季】

 ◆ファジアーノ岡山 J1神戸の母体である川崎製鉄水島OBらで結成したリバーフリーキッカーズが03年に現名称に変更。ファジアーノはイタリア語でキジの意味。岡山県の県鳥で、桃太郎伝説でキジが鬼退治をしたことにちなむ。08年JFL昇格、09年からJ2。ホームタウンは岡山市を中心とした岡山県全域。2軍にあたる岡山ネクストはJFLに所属。本拠地はシティライトスタジアム(2万人収容)。

 ◆J1昇格プレーオフ J2の3~6位でJ1昇格の3枠目を争う(1、2位は自動昇格)。各1試合のトーナメント制で、3位対6位、4位対5位で準決勝を行い、勝者が決勝に進出。会場は準決勝と決勝ともに年間上位クラブのホーム。試合方式は90分間の試合を行い、準決勝および決勝ともに引き分けの場合は年間順位の優位性を確保するため年間上位クラブを勝者とする。