日本プロサッカー選手会(JPFA)主催のトライアウトの2日目が9日、千葉・フクダ電子アリーナで行われた。多くのサッカー関係者が見守る中、午後組の試合にはJリーグで東京、神戸、大宮、仙台と渡り歩いた32歳のMF鈴木規郎(のりお)の姿もあった。

 その鈴木は、30分ハーフで行われた前半11分、中央ペナルティーエリア付近から強烈な左足シュートを決めた。千葉・八千代高を卒業後に東京入り。左サイドから放つ強烈な左足シュートで、「ロベカル(ブラジルのロベルト・カルロスの略)」ならぬ「ノリカル」の異名を取った。その左足は健在だった。

 左サイドハーフでプレーした前半とは打って変わり、後半はボランチで出場。周囲にパスを散らす、落ち着き払ったプレーで試合を引き締めた。鈴木は「初めてのトライアウト。難しいのは周りから聞いていました。自分のやれることをやろうと。あまりガツガツせず、その中でやれることをアピールできればいいかなと。(得点は)誰のものでもいいので」と落ち着いた様子で振り返った。

 鈴木は14年に仙台を退団した後、15年はフィリピンのグローバルFCでプレーした。昨春に帰国し、J2千葉、J2群馬に練習生として参加したが、契約には至らず。その後は関東1部リーグのボンズ市原(千葉)の練習にも参加し、体調を維持してきた「無所属選手」だ。ただサッカーへの思いは強く、自ら動いて今回のトライアルに参加。「(参加を)決めたのは1カ月くらいでした」と言う。

 「海外はフランス(アンジェ)とフィリピンを経験しましたが、やっぱり日本が環境的には一番恵まれている。32歳なので、第2の人生も考えながら。どうなるか分からないですけど、もう一度(サッカーを)体が続く限りは続けたい」。鈴木の執念は実るのか-。気負わず、てらうことなく、ただ吉報を待つ。【佐藤隆志】