「仙台の王様」を封じた。仙台は10日、甲府と練習試合(45分×4本)を行い、合計2-0で勝利。今季Jクラブを相手に、初めて完封した。攻撃力アップを目標に導入した新布陣「3-4-3」が守備面でも機能し、甲府へ移籍した元エースFWウイルソン(31)を封じ込めた。試合内容について渡辺晋監督(43)や選手からは、好感触の声が多く上がっていた。

 「状態は100%に近い」と豪語したウイルソンだったが、3バックを中心とした古巣の強固な守備を崩せなかった。封じ込まれた焦りからか「激しいプレーもあった」(ウイルソン)と、DF石川直樹(31)とゴール前で接触。右膝の内側を5、6針縫うケガを負わせた。DF平岡康裕(30)は「仕事をさせなかったのは良かった。シーズン始まっても仕事をさせないようにしたい」と手応えを口にした。

 かつて「仙台の王様」と呼ばれた男を困惑させた堅守は、実戦を重ねるごとに強固になっている。3バックの弱点のカウンター攻撃は、4日の大宮戦に続いて落ち着いて処理。平岡は「甲府はカウンターがうまいチーム。それほどカウンターのシュートまで行かせなかったところは良かった」と好感触だった。

 空いたスペースをつくらせないように選手はポジションに関係なく、縦横無尽に駆け回り、堅守を支えた。MF菅井直樹(32)は「動かなきゃいけないんで」と平然と振り返り、渡辺監督は、予想以上に動き回ってくれた選手を「大歓迎!」と手応えを感じた。

 相手の堅守に攻め手を欠いて迎えたハーフタイム。選手間で引いて守る相手の対策を話し合い、ボールの動かし方や選手の動き方を確認した。2本目の14分、ゴール前の混戦から最後はMF奥埜博亮(27)が先制点を決めた。司令塔のMF富田晋伍(30)は「テンポよくボールを流動的に動かせた」と攻撃の変化に満足した。

 4本目は予告なしに「3-5-2」の布陣を試しても選手は冷静にプレー。渡辺監督は選手の成長を実感して「去年やってきたものの成果」とニンマリ。4年目の渡辺仙台は確かな成長を見せている。【秋吉裕介】