東京ヴェルディが圧倒的に徳島ヴォルティスにボールを支配されながら、辛くも2-1と接戦を制し、シーズン5位で終え、PO進出を決めた。

 一方の徳島は試合前は5位で優位にたっていたが、東京Vに後半43分に勝ち越しゴールを奪われ、さらには他会場の千葉が試合終了間際に勝ち越したこともあり、5位から一気にPO圏外に落ちてしまう「悲劇」に見舞われた。

 サンバのリズムの応援で、選手が躍動する以前の読売クラブの面影はない。狭いエリアでリズミカルに細かいパスをつなぎ、意表をつくパスと、豪快なダイレクトシュート、そんなイメージから、今の東京Vは完全に生まれ変わっている。

 この試合でも、徳島に中盤を支配されても、黙々と動き続ける。前半31分に、相手DFにのしかかられながら、DF平が巧みにタイミングをずらしながら、FKに頭で合わせて先制した。FKを大きな好機として、逃さない勝負強さは名門らしい試合運びだった。

 後半すぐに同点に追いつかれるが、そこからロティーナ監督の落ち着きと、選手の勤勉さで試合の局面を見極めた。後半40分過ぎまで徳島に圧倒的にボールを回された。ゴール前まで何度も迫られるが、決定的な場面は作らせない。要所でDFがシュートブロックを忠実に実践する。やがて疲れはじめた徳島にスキを見いだすと、一気に攻め上がり人数をかけて徳島ゴールに迫った。

 後半40分過ぎの心境を問われたロティーナ監督は「正直言うと、そんなに焦っていなかった。他の会場の情報も入れながらやっていたから。引き分けでもPOに行けると思っていた。勝利が必要なら交代もしていたと思う」。そんな監督の思惑を見透かしてか、選手は勝負どころと感じて43分に一気にボールを運ぶ。混戦からシュートが右ポストにはじかれたところを、MF内田が抜け目なく押し込んで勝ち越しに成功した。「普段は入らないんですが、よく入ってくれました」。内田のコメントは控えめだが、試合の流れを感じて奪った素早い連係プレーだった。

 一方の徳島ロドリゲス監督は「全体的に支配していた。2点目はゴチャゴチャして奪われた。直接やられたわけじゃない。しかし、サッカーは時に残酷だ。いいサッカーをしていても、勝つとは限らない」と、無念の表情を浮かべた。

 東京Vは2008年シーズンにJ1で17位という不本意な結果で降格して以来、10年ぶりのJ1復帰を目指す。ロティーナ監督はPO進出について聞かれると、こう言った。「シーズン前、ほとんどの人が我々がPOに行くとは考えていなかった。名古屋、千葉、福岡がPOに進出すると予想していた。今、選手は希望にあふれている。予想されなかったPOに進み喜んでいる。その喜びのまま準備したい。POでも我々のサッカーを表現したい」。

 ハードワークで汗を流す勤勉さを持ち、耐えながら攻防の中に勝機を見いだす。新しい東京VがPOでも存在感も示す可能性がある。