ベルギー1部シントトロイデンへの移籍が決まっている浦和レッズDF遠藤航(25)が、浦和でのラストマッチとなるC大阪戦にフル出場した。

 試合終了を告げる笛が響く。遠藤の脳裏にはさまざまな記憶が巡っていた。優勝した16年ルヴァン杯決勝で、PK戦の5人目として死闘に決着をつけた瞬間。昨年のアジア・チャンピオンズリーグ決勝第2戦で、FWラファエル・シルバがゴールを奪った瞬間。「すばらしい瞬間は残っていますね」。湘南から加入して約2年半。多くの経験をした。

 この日は3バックの右に入り、体を張ったプレーで危険の芽をつんだ。チームは後半30分のFW興梠の得点で追いつき、敵地で勝ち点1を手にした。「勝ちたかったですが」と、大粒の汗をぬぐった。

 試合後はアウェーに駆けつけたサポーターに手を振ってあいさつ。ピッチからの去り際にはC大阪サポーターからも遠藤コールが送られ、スタジアム全体から祝福を受けての旅立ちとなった。遠藤は試合後「C大阪サポーターの方々にもお礼を伝えたい」と感謝の気持ちを口にした。

 アンダー世代の日本代表にも選ばれ続け、海外志向はもともと強まっていた。ロシアW杯で出場機会がなかった悔しさが、決断をさらに後押ししたという。「(W杯で)出場していた選手は完全燃焼したと思いますけど、僕は悔しさを持って帰ってきた」。最高の舞台のピッチを目の前にして、プレーできなかった。「『あの経験があったから今の自分がある』と4年後に言えるように」。29歳となる次のカタールW杯はチームの中核になる。リオデジャネイロ五輪で主将を務めた男の目に力がこもった。