ピクシー、喝!

 名古屋ドラガン・ストイコビッチ監督(43)が15日浦和戦(埼玉)に向け強烈な喝を入れた。13日、愛知・豊田市内での攻撃練習中、簡単なシュートが外れると「ゴール!」と怒号を響かせ、雰囲気を一変させた。練習中には攻めて守って投げて?

 と大活躍。完全アウエーの埼玉で初勝利をつかむため、フル回転した。

 そのひと声で練習場の空気が一変した。サイドチェンジを交えた攻撃パターンの確認中、左からの好クロスをFW巻が頭でヒット。しかし、ボールはゴール左へと外れた。その瞬間、ストイコビッチ監督が「ゴール!」とシャウト。短く、怒気を含んだ、迫力満点の喝だった。

 巻に限らず、その前からシュートの決定率は芳しくなかった。DFなしの確認メニュー。GK以外に攻撃を遮るものがない中、攻撃陣がフリーでシュートを打てる状況だっただけに、ストイコビッチ監督としては見過ごすことはできなかったようだ。

 その声のトーンには、就任以来最高のインパクトがあった。MF小川は「決めなきゃ、とピリッと引き締まりましたね」。巻も「いつも引き締めてやってますけど、確かに引き締まりました」。その後は、シュートの決定率もアップした。

 強烈な喝の理由を「自信を持ってやって欲しかったんだ」と語った同監督は、15日の浦和戦に向けて精力的に動いた。攻撃の手本を示したかと思えば、DF役でプレッシャーもかけた。さらに自らゴール裏からシュート練習の球出しを行い、自慢の右足ではなく右腕をしならせた。大きなバックスイングからスリークオーター、その後はアンダースローと変幻自在。「ゴール前ではどんな球が来るか分からない」とボールに微妙な回転をかけ、熱血指導した。

 現役時代、リーグ浦和戦では6得点を決めている。得点した試合は3勝1敗と好相性を誇っていた。現在は監督だけに、出場してゴールを決めることはできないが、喝でゴールへの思いは注入完了した。その効果のほどには「土曜日の結果を見てみないとね」とニヤリ。自信ありげな笑みを浮かべて引き上げた。【八反誠】