<J1:名古屋2-0浦和>◇第2節◇15日◇埼玉

 名古屋ドラガン・ストイコビッチ監督(43)が初勝利をつかんだ。アウエー埼玉に乗り込んでの浦和戦で、アジア王者と堂々と渡り合い2-0の完勝。1-1で引き分けた8日京都とのJ開幕戦(豊田ス)から数え、監督として2試合目での記念の1勝だった。旧ユーゴスラビア代表時代の恩師イビチャ・オシム前日本代表監督(66)も観戦する中での快勝劇に「私の人生で、ずっと心の中に残る試合だ」と感慨に浸った。

 ピクシーはスーツ姿でベンチにいた。それでも、鍛え上げた選手たちが自身の現役時代に匹敵する見事なサッカーをピッチに描き出した。アジア王者を敵地で圧倒。輝かしいキャリアに「私の人生で、ずっと心の中に残る試合だ」と監督初勝利を書き加えたピクシーは「今日は素晴らしい内容だった。テレビで観戦した方々にも、魅力は伝わったはずだ」と胸を張った。

 前半14分には就任以来徹底して指示し、意識付けてきたサイドからのクロスをFWヨンセンが頭で決め先制。後半23分の追加点は、MF小川がリスタートを焦った相手GKの不用意なパスに詰め、けり込んだ。小川は「いつも通りプレスを掛けにいっただけ」と冷静に振り返った。徹底した攻撃意識と、労を惜しまず全員で走り抜く姿勢を証明する2発。「組織的で美しく、モダンなフットボール。今日の試合では選手が私の与えたことをやってくれた」。これぞピクシーフットボール満載の90分だった。

 J最高のスターでもある新米監督はチーム一丸の姿勢を、身をもって示して古巣をまとめてきた。J開幕前最後の練習試合となった1日の横浜遠征(日産ス)では、前日に東京都内で監督会議などJ公式行事があったにもかかわらず、日帰りで愛知に戻り翌日チームと行動をともにした。J開幕戦では「1つになろう」と自ら発案し試合開始前にベンチ入り選手、スタッフも含め全員で大きな大きな円陣を組んだ。「我々はファミリー」。結束による1勝を喜んだ。

 試合後、観戦に訪れた恩師のオシム監督に「今日の勝利が最後にならないように」とオシム節で祝福された。尊敬する恩師との対面には「とてもいい試合だったと言ってもらえたし、何より元気な姿が見られてうれしかった。次は名古屋まで見に来てくれると約束してもらったんだ」。浦和相手では埼玉5戦目でクラブ史上初勝利。リーグ制覇がなく「万年中位」とささやかれてきた名古屋の歴史が、ピクシーに率いられ変わり始めている。【八反誠】