英国屈指の戦略家を下す戦法は“和風味付け”だ。コンサドーレ札幌は25日、ナビスコ杯千葉戦(函館)に臨む。同杯C組1位千葉のアレックス・ミラー新監督(58)が初めてベンチで指揮を執る。札幌の三浦俊也監督(44)は、同じ4-4-2システムでも熟成させた戦術でJ1残留のライバル千葉を迎え撃つ。「ミウラ」が「ミラー」を料理して、予選リーグの首位を奪取する。

 J1残留を占う試合を前に、三浦監督の闘志がピッチに満ちあふれた。試合前日の24日、札幌・宮の沢で入念な戦術練習を続けた。1プレーごとに絞り上げるような怒声が響く。相手の指揮を執るのはプレミアリーグの名門リバプールでヘッドコーチを務めたミラー新監督だ。リーグ戦は最下位の千葉だが、クゼ監督の解任後は連勝。勢いを感じている。三浦監督は「(監督が代わって)守備をしっかりと固めた。極端にDFラインも低くしている。先制点を取るしかない」と警戒した。

 合わせ鏡のようなライバル対決だ。リーグ戦では札幌の17位に対し、千葉は18位。一方でナビスコ杯では予選リーグ1位が千葉、得失点差で2位が札幌だ。J1残留を目指すライバルチームでもある。戦術も近い。欧州の知将は千葉ではリバプール同様、4-4-2システムを導入。中盤と守備ラインを4人ずつフラットに並べる。札幌も三浦監督は欧州の基本システム4-4-2をベースにしたゾーンディフェンスを採用している。

 類似した戦術に見えるが実は違う。札幌の戦術を担当する沖田コーチは言う。「詳しくは言えませんが」と前置きしながらも「DF、中盤のラインが違う。札幌は高く、千葉は低い。あと札幌は欧州のシステムに日本流のエッセンスを微妙に加えている」と説明した。欧州に比べ体格で劣る分、運動量でカバー。99年大宮のコーチ時代から三浦監督が改良を続けながら熟成させた戦術は、両サイドの使い方などに工夫を加えた“和風味付け”になっている。

 選手起用にも対策が施されている。「クロスの精度と高さがポイント」と三浦監督は分析。ヘディングの強い池内をセンターバックとして初めて起用する。ライバルとの大切な一戦。「ミウラ対ミラー」の戦いはすでに始まっている。【上野耕太郎】