コンサドーレ札幌のMF大塚真司(32)が、288日ぶりに公式戦ピッチに立った。右ひざのけがで長期離脱していたが、10日に札幌・宮の沢白い恋人サッカー場で行われたサテライトリーグ横浜戦の後半45分間プレー。昨年10月27日の愛媛戦以来の公式戦出場だが、ブランクを感じさせない動きを三浦監督も高く評価した。17位とJ2降格圏内に低迷するチームに、完全復活した“闘将”が帰ってきた。

 ピッチに向かう大塚の表情は硬かった。前半、横浜を1-0とリードして迎えた後半のキックオフ。紅白戦、練習試合はこなしてきたが、久しぶりの真剣勝負に不安があった。だが45分を戦った後は表情が変わっていた。「いつまでもひざが危ない、危ないでは先に進まない。相手にも失礼。今日は怖がらずに相手に行けた。それは大きな収穫」。自分のプレーに自信が持てた。

 出場5分後にはスライディングタックルで相手を止めた。ひざに最も負担がある空中戦でも、若手中心の横浜攻撃陣を抑え込む。DF堀田が累積警告で退場、岡本が左足首をねんざして退き、9-11の数的不利のピッチで存分に存在感を示した。残り3分にPKを決められ試合は引き分けも、手応えは十分。三浦監督は「芳賀、(ディビッドソン)マーカス、鄭との争い。競争は激しくなる」と言った。

 待望の“守備職人”復活だ。「攻撃的」なボランチのクライトンを生かすには、相棒に危機管理能力が求められる。今季は芳賀が務めることが多いが、大塚復活で選択肢が増える。リードを守って逃げ切るケースはもちろん、攻撃力のある対戦相手の場合は芳賀、大塚の堅守コンビ先発も考えられる。落とせない試合が続く残り14戦。三浦監督は「相手によって(大塚先発を)考える。本人も先発完投したいでしょうし」と話した。

 06年、J1昇格請負人として山形からやってきた。初年度の昇格は果たせなったが、昨季は10月27日の愛媛戦で右ひざ前十字じん帯断裂、半月板損傷の大けがを負うまで39試合に出場し、J1昇格への道筋をつけた。昇格の瞬間をピッチで味わえず、ボールにも触れず走るだけの6カ月間を乗り越えJ1の舞台に乗り込む。「外から見ていてもJ1の選手の能力は高い。でも結果がすべて。勝利に貢献したい」。正念場のチームを、経験と闘志で奮い立たせる。【上野耕太郎】