<J1:鹿島2-1神戸>◇第23節◇27日◇ホムスタ

 劇的な勝利の興奮と判定への不満は試合後もくすぶっていた。鹿島オリベイラ監督は会見で質問が途切れると、自ら切り出した。「メディアから判定の質問が出ないのは疑問に思う。批判するのではなく、判定にミスがあったことを指摘しなければ、日本のレベル向上につながらない」。

 前半37分、ゴール前でヘッドの体勢に入ったMF小笠原が後から突き飛ばされたが、PKの判定は出ない。同44分にはオフサイドの位置にいた神戸FW大久保にゴールを決められた。試合後にクラブ幹部が問題のシーンをマッチコミッショナーとVTRで検証すると、マッチコミッショナーは思わず目を背けたという。9月から、審判に集団で詰め寄る行為が懲罰対象となる。一方で、「誤審」とも言える微妙な判定がなくならない状況に、同監督は我慢できなかった。

 そんな熱い思いに選手たちは結果で応えた。後半13分には途中出場のMFダニーロの突破からFWマルキーニョスが同点弾。続く1分後にはFW興梠が右クロスをヘッドで沈めて2分間で逆転した。のちにJリーグ側もPK3本分を見逃したと認めた昨年6月の大分戦ではドロー。クラブ幹部も当時「3点も見逃されたら、さすがに勝てない」と苦い思いを抱いた。

 だが今回は違った。DF岩政は「判定に何を言ってもしょうがない。普通にハーフタイムを過ごしましたよ」と冷静に切り替えた。小笠原は「もっとうまく球回しできたし、スッキリ勝ちたかった」と判定への不満を後回しにした。「誤審」を乗り越えての逆転勝利は、チームの成長の証しだった。【広重竜太郎】