<J1:神戸3-1G大阪>◇第7節◇26日◇ホムスタ

 25歳の苦労人の2発で、神戸がG大阪との「阪神ダービー」に3-1と快勝した。今季サイドバック(SB)からFWに再転向した茂木弘人が、前半11分に先制ゴール。1-1と追いつかれた同26分には決勝弾を決めた。08年2月に右アキレスけんを断裂。出番にも恵まれなかった男が、2戦連発弾でヒーローになった。神戸は今季初の2連勝で前節12位から7位に浮上した。

 つらかった日々が、すべて吹っ飛んだ。前半11分、左サイドにいたFW茂木が、MFボッティがボールを持つと同時に全速力で走りだす。ロングパスを受けると相手DFをかわし、豪快に先制弾を突き刺した。1-1の同26分にはMFアラン・バイーアのスルーパスからゴール前に抜け出し冷静に決めた。プロ初の1試合2得点。「裏を狙うのは狙い通り。本当にいいパスをくれた。感謝するだけです」。人柄を表すかのように、謙虚に喜びを表現した。

 J2だった06年は37試合で無得点。07年にFWからSBに転向の憂き目にあった。だが、同11月24日のG大阪戦(万博)で同点ゴールを決め、相手の優勝の可能性を消滅させた。SBとして自信をつかみ、意欲を胸に新シーズンに臨んだ矢先に悲劇は起こった。昨年2月のグアム合宿中、右アキレスけんを断裂。全治6カ月と診断された。同年はプロ入り初の出場機会なし。孤独なリハビリを黙々とこなした。

 今でもリハビリ中に記したノートを読み返すことがある。計10冊以上。復帰に向けてこなしたすべてのメニューが、そこには書かれてある。そして今年2月のグアム合宿、普段は控えめな男が「もう1度FWで勝負したい」とカイオジュニオール監督に直訴した。指揮官の判断は「当初は構想外だった」。ところがFWの駒不足もあって、テストの意味で11日の横浜戦(ニッパ球)で先発の座を獲得。2万人以上が集まった「阪神ダービー」でヒーローになるまで駆け上がった。

 2節前の第5節にはJ2降格圏の16位に沈んだが、茂木の2戦連発の活躍で7位まで順位を上げた。ACL出場権獲得というチーム目標に向け、次節29日はJ王者鹿島とアウェーで戦う。「これからはFWとしてチームに貢献していきたい。ここからが勝負。これを続けていかないと意味がない」と茂木は気を引きしめる。大久保がボルフスブルクに移籍して得点力不足を露呈した神戸だが、港町の新エース誕生の期待が一気に高まった。【奈島宏樹】