<J1:川崎F3-2千葉>◇第31節◇8日◇等々力

 川崎Fが「フェアプレー」に徹して首位を守った。準優勝に終わった3日のナビスコ杯決勝後の表彰式での非紳士的な態度に批判が集中。それ以来の試合となった千葉戦は、試合前に全員がスーツ姿でスタンドの観客に謝罪。試合はファウル数が相手の半数以下で、警告なし、接触プレーで倒れた選手に手を差し伸べるなど、「改心」をプレーで示して、3-2の勝利を収めた。

 前半26分すぎ、川崎FのDF村上が、顔面にクリアボールが直撃して倒れ込んだ千葉MF中後に駆け寄った。手を差し伸べて中後を抱え上げて握手した。その後も川崎Fイレブンは、足をすくわれても、激しい当たりで倒されても、すぐに立ち上がり、自分たちから握手を求めた。

 前半35分に先制点を奪われた。残留をかけてがむしゃらにプレーする千葉の当たりはハードだった。それでもフェアプレーを貫いた。微妙なオフサイドの判定にも一切、不服は言わなかった。後半10分、ペナルティーエリア内で倒されたMF中村は、ファウルをアピールするしぐさも見せなかった。

 FWレナチーニョのPKを含む初のハットトリックで接戦を制した。警告、退場はゼロ、ファウル数も千葉20に対して8しかなかった。そのフェアプレーに川崎Fの再出発への決意が込められていた。

 3日のナビスコ杯の表彰式での態度が厳しく批判された。それ以来の試合でフェアプレー精神の徹底が大きな課題だった。試合前には武田社長、関塚監督、全選手らがスーツ姿で競技場のトラックに整列し、サポーターに謝罪した。試合出場の自粛を命じられたDF森は号泣しながら何度も頭を下げた。

 MF中村は右足に違和感を抱えながらも強行出場。前半38分に相手DFをかわして放ったシュートで激痛を感じたが、プレーを続けた。「今日の試合がどれだけ大事か分かっていたので、自分から交代は言わなかった」(中村)。後半に入ると、けいれんを起こしロスタイムに交代した。

 試合後、中村は「今日の1勝は、ただの1勝ではない。リスタートに向け、一生懸命やっていかなければいけない」と表情を引き締めた。選手会長のDF井川祐輔(27)も「今日のように形に表していかなければならない。新たな1歩が踏み出せてよかった」。

 品格も問われる重圧を乗り越え、勝ち点差1の首位を守った選手に対して関塚監督は「我々にとって意味のある、重い1勝。これからも積み上げていくしかない」と目を潤ませた。武田社長も「よく乗り越えてくれたが、これを続けていくことが大事」と涙を流していた。【松田秀彦】