<天皇杯:仙台2-1川崎F>◇12日◇準々決勝◇ユアスタ

 死闘を制したベガルタの勢いが止まらない!

 J2仙台が延長戦の末、今季J1リーグ2位の川崎Fを2-1で撃破した。前半35分にFW中島裕希(25)が先制。後半44分に追いつかれたが、延長後半3分にFW平瀬智行(32)が頭で決勝点を奪った。大宮、東京に続くJ1勢3連破で、クラブ記録をさらに更新する初の4強進出。守備から組み立てる手倉森誠監督(42)の采配も的中し、ユアスタを今季無敗で締めくくった。

 無心で飛び込んだ。MF関口の左クロスに、ゴールマウスを真後ろにし、DF伊藤を背負ったFW平瀬が飛び込む。バックヘッドでGK川島が届かない絶妙なコースにボールの軌道を変え、ゴール右上に流し込んだ。得点を確認すると両手を広げて、絶叫で渦巻くサポーター席に駆け寄った。「セキ(関口)の素晴らしいクロスを後ろにそらしただけ。入っちゃった」。ゴールの職人は、そう言っておどけた。

 前半、均衡を破ったのが中島だった。関口のスルーパスに抜け出し、左サイドで相手GKの位置を確認。右足を振り抜きグラウンダーで突き刺した。3回戦の大宮、4回戦の東京に続き、これでJ1勢から3戦連発。今季得点した試合を11戦全勝とし「自分たちのサッカーができれば通用すると思ってた」と手応えを語った。関塚監督は2人の鹿島時代の恩師。平瀬が「厳しい指導の恩返しでゴールを決めたかった」と言えば、中島も「成長を見せられた」と喜んだ。

 手倉森監督の采配も的中した。試合前に「まず手堅い守備から。チャンスはカウンターだ」と指示。先発FWの中島と中原は守備優先で試合に入り、序盤は3ボランチに変更。MF田村がMF中村をマークしチャンスをうかがった。後半44分に追いつかれたものの、今季J1最多64得点の川崎Fを120分間で1点に抑えた。チーム1、2を争うスタミナを持つMF梁でさえ「両足がつって、早く時間がたってくれ」と願うほど消耗したが、J2最少失点の意地で走った。

 手倉森監督の験担ぎも実った。前日11日、故郷・青森県五戸町の日本酒「菊駒」を、クラブハウスの周りにまいた。普段は塩釜神社の塩を盛っているが「次の相手は塩だけじゃ足りない」と清め酒。一升瓶を空にして必勝祈願した指揮官は「これで勝つな。明日は延長2-1だ」。予言通りの金星だった。

 クラブ初、J2では3度目の4強進出。29日の準決勝で、夢の「元日切符」をかけ国立でG大阪と対戦する。平瀬や中島、手倉森監督の古巣鹿島との対決は消えたが「もっと上に行きたい」と指揮官。大物食いで勢いを増した仙台が頂点まで駆け抜ける。【木下淳】