<全日本ユース>◇決勝◇29日◇国立

 コンサドーレ札幌ユースU-15はヴィッセル神戸ジュニアユースに1-2で敗れ、悲願の初優勝を逃した。決勝進出3度目でまたも栄冠をつかめなかったが、1-0の後半24分にMF神田夢実(15)のゴールで同点に追いつくなど、8月の日本クラブユース選手権王者を苦しめた。神田とFW下田康太(15)が計8得点で得点王に輝くなど、潜在能力の高さもアピール。来季はU-18に7選手が昇格する予定で、トップへの練習参加を増やし、さらなる下部組織の強化を図る。

 札幌ユースU-15が、またも1点に泣いた。02、03年と2度の準優勝と同じ1点差での敗戦。スタンドに集まった300人のサポーターにあいさつをすませると、メンバーの目からこらえていた涙がこぼれ落ちた。「歴史を塗り替えようとしたのに。悔しいです」と、堀米悠斗主将(15)は肩を落とした。

 力の差はほとんどなかった。後半13分に失点も、同24分に下田からパスを受けた神田が同点弾。「いいパスがきたので思い切ってうった」という強烈な左足シュートは右ポストに当たりゴールへと吸い込まれた。5分後に失点して涙をのんだものの、しっかり中盤でつなぐ統一されたコンセプトを貫き、チームとしての質の高さをアピールした。

 元日本代表DFでもある名塚善寛監督(40)は「この経験を無駄にしないで生かしていかないと」と振り返る。プロの下部組織としての存在意義を高めるため同監督のU-15世代での指導方針は「戦術よりまず個人能力」という。戦術は教えすぎずに「U-18にいってからの伸びしろを残しておきたい」と選手の個性にまず気を配ってきた。

 その効果もあり、神田と下田はそろって大会得点王。サイドバックの堀米も神田とともに世代別日本代表に選ばれるなど、ユース選手の個人能力が全国的にも証明されてきた。

 来春、7選手がU-18に昇格する。来季はトップのメンバー不足を補うためユース選手の練習参加が増える方向にある。名塚監督も「1年生が参加する可能性があるかもしれない」と言う。高2から参加したMF藤田や今季、高3ながらトップ帯同した古田ら、ユース世代からプロにまじってきた選手が結果を出し始めている。それだけに今後のトップ、ユース間交流の強化は、クラブ全体の底上げにもつながるはずだ。

 「もし練習に参加できたらゴンさんから考え方などたくさん学んできたい」と神田。42歳のカリスマの魂が札幌の15歳に継承されたとき、コンサドーレの未来も少しずつ進化していくかもしれない。【永野高輔】