<ナビスコ杯:清水1-0浦和>◇30日◇1次リーグ◇B組◇埼玉

 J1清水がFW原一樹(25)が後半42分に放った決勝ゴールで浦和に競り勝ち、1次リーグB組暫定2位に浮上した。負ければその時点で予選敗退が決まる絶体絶命のピンチを、途中出場のストライカーが一撃で救った。守備陣もGK西部洋平(29)を中心に粘り強く踏ん張り完封。公式戦5戦ぶりの勝利で次節、ホームでの「静岡ダービー」(磐田戦)へ望みをつないだ。

 原には分かっていた。0-0で迎えた後半42分。ファーサイドから一気にニアサイドに走りこんだ。「あいつのボールはニアにまでしか届かない」。右サイドを駆け上がったDF辻尾からのクロスにドンピシャでヘディングシュート。値千金の決勝ゴールをたたき込んだ。同33分にピッチに投入されてから、わずか9分、たった1本のシュートで大仕事をやってのけた。

 大親友に近い、愛弟子の辻尾からのアシストだっただけに、ひときわ喜びは大きかった。「だてに毎日、昼飯を一緒に食べてないッすよ」と、原が自慢げに話せば、辻尾も「いつも練習でニアに引っかかってしまうのを原さんは知ってた。タッチも悪くなかったし、今日のはミスじゃないっすよ」と、満面の笑み。練習後、三保の海岸沿いを2人で雑談をしながらランニングし、そのままランチに向かう。そんな普段からの“連係”が大きな1勝をもたらした。

 守備陣の踏ん張りも大きかった。相手シュートが2度、ポストに嫌われるラッキーもあったが、西部が再三の好セーブで死守した。平岡、岩下の両センターDFも、最後まで相手FWに体をぶつけ、必死に耐えた。西部は「ポストに助けられたのもあったけど、0で終われて良かった。やっぱり勝ちは最高っす」と胸を張った。

 公式戦5戦ぶりの勝利こそつかんだが、いまだ状況は厳しい。3年連続の決勝トーナメント進出は自力の道は断たれ、他会場の結果次第となる。長谷川監督は「やっと、活路が少し見えてきた。(今日は)気持ちのこもったゲームができた。これを最後のダービーにつなげたい」。かすかに見える光に向かって清水が突き進む。【為田聡史】