<J1:浦和4-0京都>◇第15節◇28日◇西京極

 赤い悪魔が「鬼門の夏」を乗り越えた。浦和が、今季最多得点の4-0で京都を下し、リーグ戦の連敗を2で止めた。後半8分、DFサヌ(26)が、移籍後初ゴールを決めて先制。これで勢いづき、パスサッカーが本領を発揮して追加点を奪った。ナビスコ杯を含めて公式戦6試合ぶりの勝利で、順位も3つ上げて6位に浮上。昨季7連敗で失速した夏場に、反撃の白星を手にした。

 失いかけた自信は、自分自身の「足」でつかみ取るしかないと思っていた。後半8分。左サイドバックのサヌは、勝負に出た。右から中央へと味方がつないだショートパスへダッシュ。GKと相手DF3人の動きが目に入っても迷いはない。足元へ転がったボール目がけて、約25メートルの距離から思い切り右足を振り抜いた。連敗脱出の願いを込めた先制の弾丸ロングシュートを突き刺した。

 リーグ2連敗中に臨んだ最下位との一戦。今季新加入したばかりの助っ人ですら、負けられない重圧を感じていた。最近の2戦は攻撃参加に出た裏のスペースを相手に突かれてピンチを招く場面が多かったが「日本の夏は厳しい。でも、今こそ仕事をする。それ以外に選択肢はない」と自らを奮い立たせた。

 夏場の連戦を想定し、練習後は必ず冷水に体を浸して疲労回復に努め、栄養分を考えて日本食を口に運んだ。全員で攻め、耐えて守りながら結果が出なかったうっぷんを晴らすかのように、アフリカ人特有の爆発力と幼少のころから器械体操で鍛え上げたバネを生かし、最後方から駆け上がって決めた移籍後初ゴールだった。

 サヌの一撃で一気に攻勢に出た浦和は、中盤から前線にかけて京都を圧倒。リーグ戦では5月5日の名古屋戦以来の勝利に、フィンケ監督は「このような大差での勝利は予想できなかった。本当にうれしい」と喜んだ。柱谷GMとミーティングを重ねる中で「1点取れれば、それが起爆剤になって勝てる」と選手たちを信じ続けたことが、報われた。7連敗で優勝戦線から脱落した昨季とは違う。赤い悪魔が、暗闇を抜け出した。【山下健二郎】