<ナビスコ杯:川崎F1-0磐田>◇準決勝第1戦◇29日◇ヤマハ

 体調不良を訴えていた川崎FのMF中村憲剛(29)が気迫のこもったプレーでチームをけん引し、1-0で勝利した。日本代表ザッケローニ監督(57)がこの試合を視察。10月8日に行われるアルゼンチン戦(埼玉)代表発表前日となったが、中村はスルーパスでたびたびチャンスを演出。FW黒津勝(28)が決勝点を決めた。同第2戦は10月10日に行われる。

 MF中村の気迫が1-0の勝利を導いた。日本代表新メンバー発表を翌日に控えたザッケローニ監督の前で、2戦ぶりに先発復帰。自らがピッチで大声を出し、仲間を鼓舞した。前半から持ち味のスルーパスで好機を演出。スピードあるFW陣を走らせチームのリズムをつくった。ダブルボランチでコンビを組んだMF稲本は試合後、「ギリギリの状態でやっているのは間違いない。憲剛が前からプレッシャーをかけてロングボールのケアしてくれたから助かった」と称賛。MF田坂も「精神的な支柱になってくれたので、自分たちも奮起することができた」と敬意を払った。

 この日も体調が万全でなかった。リーグG大阪戦(等々力)前に38度を超える高熱で2日間練習を欠席。途中出場となった28分間も本来の動きにはほど遠かった。試合後は話す体力も残っていない状態で、チームとは別に帰路につくほど。試合前日になっても鼻水をすする状態は変わらず、気力だけでこの一戦に臨んでいた。

 G大阪戦も等々力で視察したザッケローニ監督も心配していた。日本代表スタッフからは、川崎F関係者に中村の健康状態の問い合わせがあった。この日も、新戦力発掘と同時に、9月4日のパラグアイ戦でチームを引っ張る活躍をした中村の状態を直接確認する意味合いもあった。

 後半5分にFW黒津が先制。1度は1対1の場面で止められるも執念を見せ左足で押し込んだ。中村は両手を高く上げ、拍手でゴールをたたえた。あらん限りの体力を尽くした同33分に途中交代も、あとは仲間が守りきった。「しんどかった。まだ90分。まだ何も終わっていない」と顔面蒼白(そうはく)で話した。

 そんな姿に福家GMは「名誉なことだけど、正直休ませてあげたい」と代表選出での過労を心配した。休むことを知らないエースが気を張ったまま代表発表を待つ。【鎌田直秀】