新生ヴェルディが来季、よみうりランドから撤退し、複数のグラウンドを転々としながら再出発することが確実となった。Jリーグは29日、都内で臨時理事会を開き、経営難からJリーグが再建に乗り出していた東京Vの新しい出資者や運営計画などを承認。東京Vは羽生英之社長(46)のもと新体制を発足させた。チーム名やチームカラーは変えないものの、高い賃料が経営を圧迫していた練習場については、新たに都内各所と交渉していることが分かった。

 過去の栄光を捨て、東京Vが生まれ変わる。羽生社長は練習場について「よみうりランドと交渉中」とだけ話した。ランドの今季使用料は推定年間1億5000万円。これまでの3億5000万円から大幅に減額されたが、年間予算8億円の来季は「とても払える額ではない」と同社長。この日理事会に提出された予算案にも、練習場代として「ランド撤退」を念頭に置いた1億円を切る額があった。

 すでに羽生社長はランド撤退を決意し、水面下で交渉中。全チームを1カ所で練習させることは難しく、分散を検討している。ジュニアユースなどは筆頭株主のバディが持つ「はるひ野バディ」、女子のベレーザとメニーナはスポンサーでもある「駒沢女子大」、トップチームは稲城市、八王子市、多摩市、立川市、日野市のグラウンドを転々とするプランがある。

 「もちろん、ランドでやるのが一番いい」と羽生社長は話した。トップから小学生までが同じ場所で練習することで、強豪クラブに育ったのは事実。場所が変われば、選手やスタッフへの負担も増える。それでも契約は1月末まで。「12月いっぱいまで交渉が不調なら、断腸の思いで出る」と同社長は話しながらも「新しいスタートを切るには、離れた方がいい。ゼロからやり直すメッセージになる」と、本音ももらした。5年後に予定する練馬区移転では全チームが一緒に練習できるという考えもある。

 創立の69年から多くの名選手が汗を流し、歴史を刻んできたピッチ、J発足とともに新築したクラブハウスとも別れを告げる。事務所を借りるにしても、過去の優勝トロフィーなどを飾るスペース確保は難しく、倉庫で眠る可能性もある。それでも「練習場は出ても、人という財産、育成というシステムは残る。それが最大の武器になる」。羽生社長は、高木兄弟を始め若手が次々と出てくるクラブの底力を信じていた。