仙台は今日25日、鹿児島県さつま町で第1次キャンプをスタートする。特別な思いを持って新シーズンを迎えるのが、MF関口訓充(25)。昨年10月に日本代表デビューし、今月上旬にはベルギー1部のスポルティング・ロケレンから獲得オファーが届いた。取り巻く環境の劇的な変化に戸惑いながら、向上心と責任感の間で悩み抜いた末、ベガルタ残留を決断。決意の裏には、どんな思いがあったのか。独占激白する。

 ベガルタ残留か、海外挑戦か-。サッカー人生で最大の決断を迫られていた。今月3日、関口の電話が鳴った。代理人の大野祐介氏(36)から「ベルギーからオファーが届く可能性が出てきた。スポルティング・ロケレンというクラブ」と言われた。7日に都内で大野氏と会い、ピーター・マース監督(46)の熱意を伝え聞いた。胸を打たれた。

 関口

 ロケレンの名前は正直、知らなかった。でも「まず施設を見学して」「(秋春制の中断期間で)キャンプ中だから、ギリシャまで練習試合を見に来てくれ」とか熱心で。海外経験のあるヨシ君(太田)や梁さんに相談し、チャレンジの意味はあると背中を押してもらった。悩みました。

 同じベルギー1部のリールスでプレーする、日本代表GK川島にも連絡した。

 関口

 すぐ「環境面はJリーグの方が恵まれてるけど、ステップアップにはなる」と返事をくださって。You

 Tubeでロケレンのプレー映像を見たら、確かにレベルは(欧州の主要リーグに比べて)劣る。でも、ドイツやフランス、オランダに隣接してる国で視察も頻繁に来るみたいだし、悪い印象はなかった。

 現在リーグ5位のロケレンは、昨年9月22日のAAヘント戦(3-2)から12戦無敗(8勝4分け)の上向き状態で中断期間に入った。終盤戦で、さらに上位を目指す切り札として関口に白羽の矢を立てていた。

 関口

 向こうが真剣だから本当に迷った。(日本代表DF)長友から「日本とは違うバチバチの真剣勝負ができる」と聞いてたし、ベガルタから海外に飛び出せれば、仙台や東北の子供たちの夢が広がる。その半面、補強が大詰めの時期に離れれば、チームに迷惑をかけることになる。悩みに悩んで残留を決め(今月9日に)断りを入れました。

 契約更改=残留が発表されたのは12日。関口は08年から3季連続で日本人の大トリでサインしており、サポーターも心配していた。

 昨季は単年、今季から複数年契約を結んだが、今夏以降の海外挑戦の可能性は残る。ロケレンは関口を継続マークする意向。昨年12月にはフランスの1部と2部のクラブから練習参加の要請が届いた。もう夢物語ではない。契約更改では、正式オファーが届く可能性を見越し、海外移籍の場合は違約金が発生しない条項を盛り込んだとみられる。

 関口

 昨年末も、負傷(右膝内側側副靱帯=じんたい=損傷)がなければ練習参加してた。1度しかないサッカー人生だし、海外で戦える選手は限られてる。地方クラブから海外にステップアップすることで、子供に夢を与えたい思いも強い。もし次があれば、また迷うに違いない。でも、仙台を選んだ。後悔しないよう地に足をつけてJリーグで頑張りたいと思います。

 残留が正しかったことを証明するには、迷いを吹っ切って仙台を上位に導くしかない。関口が不退転の決意で今日25日にキャンプインする。【構成・木下淳】