【上海(中国)7日=菅家大輔】サッカー前日本代表監督の岡田武史氏(55)が、監督就任について中国スーパーリーグ杭州緑城と基本合意した。渡欧前の上海浦東国際空港で明かした。6日夜に杭州市内のホテルで行われた杭州緑城の宋衛平オーナーら幹部との会談で基本合意に達したという。現在、希望するコーチ人事と補強費用などの条件面を、現地に残った代理人が詰めている状況で、今日8日にも結論が出る見込みだ。岡田氏はこの日、新天地でのアジア制覇へ改めて意欲をみなぎらせた。

 柔和な表情の中に、強い決意をみなぎらせていた。この日の昼、陸路で約3時間をかけて杭州から上海浦東国際空港に到着。杭州滞在はわずか14時間という強行日程にも、岡田氏は疲労の色すら見せなかった。

 岡田氏

 昨夜、オーナーとお話しして、お互いに頑張ってやっていきましょうということになった。

 冷静な口調で、オーナーとの話し合いで基本合意に至ったことを明かした。

 宋オーナーやクラブ幹部と夕食を取りながらの交渉は、和やかなムードで進んだという。「オーナーとも話したけど、日中は政治ではいろいろとあるけど、我々はサッカーという草の根の部分でしっかりやりましょうと」。最後はガッチリと握手を交わした。

 この日の昼すぎ、10日のスペインリーグのRマドリード-バルセロナ戦のテレビ解説のために渡欧した。それに先立ち早朝から杭州市郊外にあるクラブの練習場を視察した。東京ドーム19個分の約87万4200平方メートルを誇る広大な中泰トレーニングセンターには、競技場を含む9面の天然芝グラウンドがあり、クラブハウス、プール、トレーニング室、宿泊施設、医療施設などが完備されていた。「日本の施設を超える世界的な施設だった。本当に素晴らしい」と絶賛した。

 交渉は最終局面に入っており、杭州に代理人が残って細かい条件面の詰めの作業を続けている。「昨夜遅く、そして今朝も代理人が交渉している。コーチの人選と強化費用の部分で話がまとまっていない。当初提示されていた強化費ほどの資金が出せないようだ。まあ、近日中には決まると思いますけどね」と現状を丁寧に説明した。

 アジア一を目指すためには、戦力補強とスタッフ人事は非常に重要なため、譲れない部分がある。岡田氏は日本人を含むコーチの採用を要求しており、杭州緑城側は提示している年俸80万ドル(約6000万円=推定)に加え、新たなコーチを雇用すると当初の予算をオーバーしてしまうことを懸念している模様。ただし、交渉事は「水もの」とは言うものの、今後の交渉の進捗(しんちょく)状況次第では、今日8日にも最終結論が出る可能性もある。

 岡田氏

 ACLで優勝を狙えるクラブにしたい。選手はまだ見ていないし、今日の練習も中国代表2人がいなかったみたいだから、しっかり選手を見てからチームづくりを考えたい。決してリスクのある難しい挑戦だとは思っていない。

 岡田氏の言葉の端々から「監督モード」で前向きなニュアンスがにじみ出る。名将が新たな1歩を踏み出す瞬間が近づいている。

 ◆杭州市

 中国浙江省北部にある省都。人口約870万人。日本との時差は1時間。日本と同じ温帯性気候で本州と気候が似ている。平均気温が一番高いのが7月の28・6度で、一番低いのが1月の3・8度。市中心部の西には世界遺産の西湖があり、多くの観光客が訪れる中国屈指のリゾート地。マルコ・ポーロは地上の楽園とたたえた。近年は経済成長が進み、高層ビルも増えている。日本人も多く、日本人学校もある。岡田監督のもと、W杯を戦った南アのケープタウンとは友好都市。主な出身者は人気タレントのローラ・チャン。