都内の路上でタクシー運転手に殴る蹴るの暴行を加えたとして、警視庁玉川署は13日、東京都世田谷区、元サッカー日本代表前園真聖容疑者(39)を、暴行の疑いで現行犯逮捕した。前園容疑者は「酔っていて覚えていない」と否認している。同容疑者はJリーグで活躍し、1996年のアトランタ五輪では日本代表主将を務め、「マイアミの奇跡」と称されたブラジル戦勝利に貢献。05年に引退後はサッカーの普及、啓蒙(けいもう)活動やテレビでの解説者などを務めていた。

 ゾノが逮捕された。警視庁玉川署によると、前園容疑者は13日午前9時15分ごろ、世田谷区内の歩道上で、乗ってきたタクシーの男性運転手(45)の右ほおを殴った上、右ももを蹴り、暴行を加えた疑い。運転手にけがはなかった。前園容疑者は調べに「酒に酔っていて覚えていない」と容疑を否認している。署によれば酔ってフラフラしていた。都内で飲酒していたとみられ、帰宅するために1人でタクシーに乗って行き先を告げた後は眠っていたという。

 現場は世田谷区等々力の住宅街で、前園容疑者の自宅マンションから約200メートル離れた歩道上だった。目撃した近隣住民によると、前園容疑者は路上に倒れたタクシー運転手の男性の足を蹴ったり、胸ぐらをつかむなどしていたという。

 ほかの住民は、歩道上で運転手の男性が男に絡まれており「酔っぱらいのケンカかと思った」。様子を見ているうちに運転手が「110番してください」と訴えてきたという。住民は「運転手さんが泣きながら、助けを求めてきた。かわいそうで、すぐに家に帰って110番しました」と話した。

 数分後、駆け付けた警察官が前園容疑者を確保した。運転手は「料金を払ってもらっていなくて、お客さんが『連れが持ってくる』と言って車から降りたので追い掛けて被害に遭った」と警察官に説明していたという。

 近くに住む女性は「パトカーが3~4台止まっていて何だろうと見ていると、1台がサイレンを鳴らして走っていった」と話した。現場近くに職場がある30代の男性は「2カ月ほど前、ペットの豚を抱いて花屋さんに入っていくのを見ました。テレビで見る通りの感じで、普通な感じでしたが」と困惑した様子で話した。

 前園容疑者は昨年、日本サッカー協会のJFA公認S級コーチライセンスを取得し、将来の指導者を目指していた。一方でテレビなどで解説者を務め、前夜は午後11時からテレビ東京系の「neo

 sports」に出演。11日に行われた日本代表のセルビア戦を振り返り「シュート打たなすぎ」などと指摘していた。

 出演後の動向を「分かりません」という同局は、今後の出演については「事実関係を調査中で、未定です」とした。所属事務所は「本人はこのような事態になったことを猛省していると弁護士から報告を受けた。事実確認が取れ次第、対応を報告させていただきます」とのコメントを発表。今後は謹慎となる見通しだ。今日14日には香川県でのイベントにゲストとして参加予定だったが、辞退した。

 ◆前園真聖(まえぞの・まさきよ)1973年(昭48)10月29日、鹿児島県東郷町(現薩摩川内市)生まれ。鹿児島実高から、92年に横浜フリューゲルス入団。96年のアトランタ五輪では日本代表主将を務め、「マイアミの奇跡」と呼ばれるブラジルからの1-0の勝利に貢献した。翌年V川崎(現東京V)に移籍し、ブラジルのサントスとゴイアス、湘南を経て01年に東京Vへ復帰。02年にKリーグの安養に移籍し、04年に仁川入り。05年に現役引退後は解説者としてテレビなどに出演していた。J1通算191試合出場34得点。J2通算38試合出場11得点。日本代表として国際Aマッチ19試合4得点。170センチ。独身。