仙台MF関口訓充(25)が23日のJリーグ再開戦(アウェー川崎F戦)に向け、東日本大震災で被災した人たちへのメッセージ入りスパイクを用意した。左足に「一人じゃない

 信じよう

 希望の光を!」、右足に「共に歩み

 未来に向かって」と刺しゅうで縫い込んだ。かかと部分には自らの背番号11が縫い込まれていたが、それを外し「絆」と入れた。「どうしても再開戦に間に合わせたかった」。ミズノ社の協力を得た特注品に思いを込めた。

 被災者のために、関口は「メッセージ入りスパイク」に熱いこだわりを持って準備を進めた。どうしてもリーグ再開戦に間に合わせたかった。前日、キャンプを張るさいたま市内のホテルに届き、20日の練習中に初めて履いた。先月29日、日本代表対J選抜の慈善試合の頃から思案していた。

 「一人じゃない

 信じよう

 希望の光を!

 共に歩み

 未来に向かって」。両足で一続きの文章にした。「英語で書こうかとも思った。でも長くなって分かりづらい。伝わりやすい日本語で書くことを決めた」。文言を決めるのに3日間悩み続けた。携帯電話のメール機能に何通りもの文章を打ち込んだ。「信じよう

 希望の光を」の部分は当初「忘れないで

 信じる心」だった。

 何よりもこだわったのが「一人じゃない」の一言。埼玉キャンプ中、ニュース番組で震災報道を見た。震災孤児の話だった。「高校生の女の子でした。8人家族で暮らしていたのに、7人が津波で流されていた。まだ妹の遺体しか見つかっていなかった。でも最初は泣いていた女の子が、生きていくことが使命と気づき、力強く生きていた」。

 同型のスパイクは現在、この世に1つ。今後は4、5組に増やすという。使用後は「チャリティーオークションにかけ、売上金を震災孤児や被災した子どもたちのために使いたい」。そのまま被災地に贈る案も考えている。

 オーダーメードのスパイクの完成には通常40日ほど掛かるが、今回はわずか20日で完成させた。関口の強い気持ちにメーカー側も突き動かされた。メッセージが入った場所に以前は自分の名前があったが、外した。スパイクのかかと部分にあった背番号11も外し「絆」と入れた。「それはもう外しましたよ。みんなの気持ちを背負ってるんで」。関口がピッチを走った分、東北に思いが届く。【三須一紀】