<J1:仙台1-0山形>◇第12節◇22日◇NDスタ

 仙台は負けない!

 震災後初の「みちのくダービー」で山形に勝利した。4勝3分けとなり2位浮上。J1、2合わせて38チームで唯一の無敗チームとなった。後半8分、山形市出身のDF菅井直樹(26)が左ボレーで先制。17日、津波の被害が甚大だった宮城・女川町の避難所で炊き出しを行った。いまだ、がれきが散乱した現場を見て「まだまだ僕らは頑張らないといけない」と奮起した結果だった。

 5日前、がれきの山を見た菅井がペース配分など考えるはずもなかった。前半から飛ばしまくった。同14分、右サイドバックから約60メートルを激走し左クロスに合わせ、仙台初の決定機。何度もオーバーラップを繰り返し、スタンドで観戦していた山形の控え選手が「また、上がってきた。すげ~」と感嘆するほど。そして後半8分。MF梁の右FKをMF角田がヘッド。バーに当たり、こぼれ球を菅井が左ボレーで突き刺した。

 仙台生え抜きの9年目が地元山形での初ゴール。菅井は「最高の気分です」と満面の笑みを浮かべた。3月11日は仙台で被災。この日も先発だったFW赤嶺やMF富田らと仙台市泉区役所の駐車場に避難し、車を並べ一夜を過ごした。赤嶺がスーパーに数時間並んでガスボンベを購入。菅井が持参したこんろで焼きそばを調理し、空腹に耐えた。

 だが震災から2カ月以上たった今も、自身が被災した状況より苦しい現状があることを目の当たりにした。宮城・女川町。津波で流れたがれきが、今もある。手倉森監督やFW柳沢主将らと炊き出しを行った。「子どもたちとサッカーをやれる状況ではなかった。まだ魚のにおいなどがした」と菅井。明るく接してくれた避難者から「逆に元気をもらった。僕らは良い環境にいる。現状に満足してはいけない」と奮起した。

 最近2戦ロスタイムで失点していた弱点も克服。前夜チームで前節磐田戦で失点した映像を見た。この日も同じ状況があったがDF鎌田はためらわず大きくクリアした。手倉森監督は「被災地のために僕らは負けてはいけない」とあらためて誓った。【三須一紀】