<J1:浦和0-1大宮>◇第29節◇15日◇埼玉

 前代未聞の退陣表明だ!

 浦和のペトロビッチ監督(45)が突然、今季限りで辞任する意向を明らかにした。大宮との「さいたまダービー」に敗れ、降格圏の16位に転落。試合後の会見で「(辞任を)数週間前から決めていた」と話した。選手はもちろん橋本光夫社長(62)らクラブ幹部も「寝耳に水」の辞意表明に、8戦未勝利で5試合連続無得点と低迷するチームにさらに大きな衝撃が走った。

 ペトロビッチ監督は試合後の公式会見終了直後、突然、報道陣を前にして自ら切り出した。「(リーグ戦の)残り5試合が終われば次の年は(チームに)残らない、そういう決定をした」。シーズン中の異例の辞任表明に、会見場が騒然となった。

 今季は優勝の目標を掲げてスタートしたが、ここまで6勝11分け12敗と低迷。この日は前節まで16位だった甲府がC大阪に勝ち、同15位だった浦和が大宮に敗れたため順位が入れ替わってJ2降格圏の16位に転落する“節目”になったが、「既に数週間前から自分の心の中では決まっていた。クラブも早めに次の監督を探せればと思って発表した」と理由を説明した。

 指揮官のシーズン途中の、しかも残留争いの最中の重要な時期での突然の辞意表明は異例のこと。チームにも激震が走った。橋本光夫社長は「直接話していないし、何も聞いていない。どういうつもりで言ったのか、確認できていない」と困惑した。DF永田は「全然聞いていなかった。責任は監督だけでなく、僕たちにもある…」と動揺を隠せなかった。主将のMF鈴木は「何もコメントすることはありません」と話した。

 大宮戦はそんなチーム状況を象徴するようなチグハグな内容だった。開始からチャンスは作るが得点が奪えない悪循環。結局、後半39分に失点して、リーグ戦8戦未勝利。しかも5戦無得点と長いトンネルを抜けることができなかった。

 後半21分から途中出場した日本代表FW原口は試合後、「(J1に)残留するしかない。残留とナビスコ杯と天皇杯を勝って、監督に恩返しがしたい。責任も感じているし、より一層気合を入れて次の試合に勝たないといけない」と語気を強めた。残り5試合。残留争いはさらに過熱する。「残りの試合を、熱いハートを持って戦う」と話したペトロビッチ監督の表情はさえなかった。【保坂恭子】