<J1:神戸3-1柏>◇第7節◇21日◇ホームズ

 やっと勝った!

 神戸が公式戦7試合ぶりの勝利を飾った。昨季の王者柏に完勝だ。前半14分にMF野沢拓也(30)の移籍後初ゴールとなる芸術的FK弾で先制。一時は同点に追いつかれながらも、左足首手術から復活し初先発したFW田代有三(29)が終了間際にダメ押しの3点目を挙げた。「元鹿島コンビ」の活躍で約1カ月ぶりの白星。長いトンネルから抜け出した。

 その瞬間、勝利を確信した。2-1で迎えた後半ロスタイム。MF野沢のクロスを起点に、こぼれてきたボールを田代が左足で押し込んだ。ダメ押しの3点目。神戸の選手は抱き合って喜んだ。その片隅で感極まった野沢が涙を流す。ナビスコ杯含め公式戦6試合連続の完封負けと苦しんだチームが、3月17日札幌戦以来、約1カ月ぶりの白星。昨季王者を相手に鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような完勝劇だった。

 勝利の立役者は、鹿島から獲得した「田代&野沢」のコンビだ。前半14分に野沢の芸術的FK弾で先制。一度は同点に追いつかれながら、6試合も無得点だったチームとは思えないほどの執念で終盤にMF小川が勝ち越し弾、そして田代のダメ押し弾と続いた。昨年12月に左足首を手術し、この日が移籍後初先発の田代は心から言った。

 「長いリハビリで、苦しかった時を思い出した。最後まで頑張っていればまた点が取れる。シュート数を見ましたけれど、あれしかない。本当はもっとシートを打たないとね。ご褒美みたいなゴールです」。

 唯一のシュートが移籍後初ゴールにつながった。ケガで苦しんだ男に、サッカーの神様がプレゼントしたような得点だった。

 勝利への思いは想像以上だった。涙の野沢は「みんなの思いを、あれ(FK)で表しました。連敗していろんな思いがあった」と珍しく感情をあらわにした。和田監督も「6連敗して得点できないことが重くのしかかっていた」と漏らした。鹿島から獲得した2人に加え、日本代表の伊野波、G大阪から加入した橋本と高木…。今季の移籍組は「勝ち慣れた選手」がほとんどだ。勝てないジレンマも抱えながら、この1カ月は苦しみ抜いた。エース大久保が負傷する不運はあったが、神戸にようやく光が差し込んだ。【益子浩一】