16年ぶり新監督初陣勝利を狙う!

 J2札幌は今日3日、フクダ電子アリーナで千葉とJ2開幕戦を行う。財前恵一監督(44)にとっては、指揮官デビュー戦となる。札幌の新監督が初戦で勝てば97年のフェルナンデス監督以来となる。岡田監督、三浦監督、石崎監督と、過去J1昇格を果たした指揮官でさえつまずいた、鬼門の就任初戦で勝ち点3を奪い、上位進出の足がかりにする。

 気負いはない。熊本県民総合運動公園で行われた2日の最終調整で、財前監督は終始、リラックスした表情で通した。「いよいよ明日からだね。楽しみな部分の方が多いよ。相手は千葉だからね。勝てば選手も自信がつく。当然、勝ち点3が一番だよ」。4週間にわたる長い熊本合宿を終え、顔は浅黒く日焼けした。無精ひげの残る口元を緩め、かすかに笑顔を浮かべた。

 難敵といえど、財前流を貫くことが最大のテーマだ。「うちは誰がキーマンというのはない。なんだろね。チームとしてやってきたことを、フクアリの雰囲気にのまれずやれるか。それが大事だね」。熊本ではJクラブ相手に4戦、韓国Kリーグ相手に2戦、アマ、大学生相手に各1戦と4週間で計8試合と実戦重視の調整をすすめてきた。根幹はボール保持。どこに動けばつながるか、次の次を考えて連動する意識を、ゲームの中で浸透させてきた。

 正直、まだ完璧ではない。「開幕に勝つのも大事だけれども、シーズン通して成長していく部分も必要だよね」と言う。限られた条件でのチームづくりだった。経費削減でグアム合宿が中止。始動からの2週間は室内の限られたスペースでの練習を余儀なくされた。「正直、熊本に入ってからの1週間は、これで90分戦えるのかなという不安はあった。でも選手が積極的にやってくれたのが大きい。最低限、間に合ったという感じかな」と選手の踏ん張りをねぎらった。

 97年の現役引退時、巡回スクールコーチとしてサッカーの楽しさを広めるはずだったが、ユースコーチに急きょ欠員が出たことがきっかけで札幌U-15コーチになった。指導者の道を歩みだし16年。新監督として初戦に勝てば、札幌としては、その97年以来16年ぶりの吉報となる。「夢を持ち続ければ成長する。でも本気で思えるかが大切。札幌の選手はまだ足りないかな」。監督もチームも産声を上げたばかり。財前札幌は1つずつ、自信を積み重ねて、昇格戦線に旋風を起こす。【永野高輔】