<J1:浦和1-0新潟>◇第24節◇8月31日◇埼玉

 浦和は、後半17分にFW興梠慎三(27)が決めた1点を守り切り新潟を下した。気温31度と厳しい条件の中、持ち前のパスサッカーを捨て、ロングボールを随所で使い、勝ちに徹したサッカーで急場をしのいだ。前節で横浜に完敗し、このままズルズル後退しかねないムードの中、スタイルを変えてまでつかんだ貴重な勝ち点3となった。

 浦和が持ち味を捨てて勝った。風下だった前半は後方からボールをつなぐいつも通りのサッカーで試合を支配した。ハーフタイム、モブキャスト社が大型ビジョンに出したボール支配率は、浦和が56%で新潟が44%。前半はお互いにチャンスを決め切れずにスコアレスで折り返した。

 浦和が切り替えたのは、風上に立った後半だった。後方からパスをつなぐだけでなく、ロングボールを蹴り込んだ。MF阿部勇樹主将(31)は「状況をみて対応しようということ。ゼロに抑えられたしその中で先制点が取れた」と言う。

 GKを含めた11人が連動して動き、パスをつなぐサッカーは運動量を要求される。ペトロビッチ監督(55)は「ハーフタイムには吐き気を訴える選手もいた」と話す、気温31度、湿度63%。試合が進むにつれて運動量が低下するのは明白だった。

 DF槙野智章(26)は「前節敗れたマリノス戦で得た教訓を生かせた」と振り返った。0-3と完敗した横浜戦は、DFラインからパスをつなぐところを狙われた。攻撃の形すら作れず、得点できずに敗れた。

 これまでのやり方を変えることは、横浜戦のVTRを見ながら選手同士で話し合ったという。槙野は「ロングパスを蹴ったら、押し上げることを話し合った」と言えば、阿部も「うまくセカンドボールを拾えた」と語った。

 試合終了後のボール支配率は、浦和が44%で新潟が56%。新潟にボールを持たせ時計の針を進め、攻撃はシンプルに。興梠の決勝点は、柏木が倒されて得たFKから、パス2本で生まれた。

 勝った24日の清水戦前には、浦和サポーター4人が清水の選手らが乗ったバスに爆竹などを投げつけ、到着したエコパの駐車場で警備員の胸ぐらをつかむなどして逮捕された。そして前節は横浜に完敗。新潟に敗れれば優勝が遠のく試合で、4万人が後押しした。試合後には選手がTシャツで「残り10試合、今日からの合言葉は王座奪還」と宣言。浦和が見せた冷静な試合運びは、06年以来のリーグ優勝を予感させた。【高橋悟史】